タイトル |
GISと表計算ソフトを組み合わせた窒素流達負荷量のモデル評価法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2005~2007 |
研究担当者 |
吉田正則
大林博幸(滋賀農技セ)
大久保卓也(琵琶湖研)
柴原藤善(滋賀農技セ)
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発行年度 |
2008 |
要約 |
GISと表計算ソフトを組み合わせることにより琵琶湖流域内の窒素流達負荷量を簡易に評価できる。本法により水田、転換畑、市街地、事業所、畜舎、山林などが混在した流域における水田からの河川排出負荷量や琵琶湖への流達負荷量を推定することができる。
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キーワード |
琵琶湖流域、GIS、表計算ソフト、窒素、流達負荷量
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背景・ねらい |
近年、近畿地域では琵琶湖の富栄養化を防止することが良質な水資源を確保する上で喫緊の課題となっている。そこで、農地から河川を経て琵琶湖へ流出する窒素負荷量のモデル評価法を開発し、環境負荷低減技術の面的な取組が琵琶湖の水質保全にもたらす効果の定量予測に資する。
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成果の内容・特徴 |
- 本法では、対象流域のGISデ-タ(ここでは滋賀県農村地域GIS)を用いて約4,000haの流域内の河川、排水路に500mごとの流程ポイントを設け、地形や排水路の流向などからそれぞれの流程ポイントに流れ込む区域を特定する(区間集水域、図1)。それぞれの区間集水域内の土地利用形態を農地、市街地(事業所敷地含む)、山林などに区分し、それらの面積と配置を明らかにする。最小計算単位を区間集水域とすることで、窒素排出負荷量の地域間差がメッシュ法と比較してより現況に近い形で表現できる。
- 生活系、事業系排出負荷量は、滋賀県及び関係市町から提供されるフレーム値をもとに原単位法で算出する。市街地排出負荷量は滋賀県の宅地・道路原単位による総排出負荷量を日雨量によって比例配分して求める。山林排出負荷量は滋賀県採用のLQ式より、家畜ふん尿の農地還元排出負荷量(畜産還元)は、原単位法と滋賀県第4次湖沼水質保全計画の流出率より推定する。
- 農地では、既往の現地圃場試験から1段タンクモデル(図2)による降雨流出解析を行い、水稲作付け期、同非作付け期、並びに小麦・大豆作付け期における流出水量を予測する。これらの予測流出水量と現地圃場試験の要因解析から得られた作期別LQ式(図2)を用いることにより、作付け体系別、作期別排出負荷量を推定する。
- 上記の資料から、区間集水域別の排出負荷量を日単位に計算するワークシートを表計算ソフト上に作成する。ここではさらに、河川水の流下過程における窒素除去機能を式1により推定し、流域末端(琵琶湖河口)付近に流達する窒素負荷量を計算する。
- 本法による窒素流達負荷量のモデル計算値は、実測値の月別変動パターンをよく再現している(図3)。5月の代かき田植え期と7月の追肥期は水田からの流達負荷量が大きいことから、この時期の水田排出負荷量を抑えることが琵琶湖の水質保全を図る上で重要になるといえる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本法は、滋賀県が推進する「環境こだわり農業」(水田における化学肥料の5割削減と浅水代かき法を中心とする負荷低減技術体系)の普及が琵琶湖へ流入する負荷量の低減にもたらす効果を定量評価するために用いる。また、農地・水・環境保全向上対策で実施される集落活動等による環境負荷低減効果の検証評価にも活用できる。
- 図3でモデル計算値が実態(実測値)をやや過小評価したのは、浅層地下水の河川浸出、未利用かんがい水の河川放流などがモデル計算に含まれていないためと考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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カテゴリ |
肥料
環境負荷低減
小麦
水田
水稲
大豆
評価法
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