組立式天水槽による急傾斜ミカン園の省力かん水技術

タイトル 組立式天水槽による急傾斜ミカン園の省力かん水技術
担当機関 広島総研
研究期間 2008~2008
研究担当者 中元勝彦
見世大作
発行年度 2008
要約 急傾斜ミカン園の最上段に、容量0.7トンの組立式天水槽を10aあたり4~8基設置することにより、梅雨期の降雨を天水槽上面から2.8~5.6トン集水できる。旱ばつ時には点滴チューブの利用により、慣行の手かん水作業に比べて作業時間を1/5に省力化できる。
キーワード 急傾斜、温州ミカン、組立式水槽、雨水、点滴チューブ、かん水、省力化
背景・ねらい
広島県内で高品質の温州ミカンを生産している地域は、沿岸島しょ部の急傾斜地に多く分布している。しかし、大部分の園地には貯水槽が設置されていないので、旱ばつ時には高酸果や落葉等の樹体損傷が発生し、当年の収益および翌年以降の生産量の低下を招いている。一方、生産者は貯水槽をトラックに積んで数キロメートル離れたダムまで数回往復し、数時間かけて動力噴霧器により手かん水を行うなど多大な労力を要している。そこで、従来貯水槽の設置が難しかった急傾斜ミカン園を対象に、最上段へ楽に運搬できる軽量で、簡単に設置できる組立式の天水槽を開発し、旱ばつ時のかん水用水源を確保する。
成果の内容・特徴
  1. 組立式天水槽の形状は箱型で、容量は729Lである(表1)。1基あたりの重量は15.6kgで軽く、その部品はさらに軽いので、急傾斜園の上まで簡単に運ぶことができる。
  2. 天水槽の材料は、コンパネ、直管パイプ、ブルーシート等の12品目で(表1)、ホームセンター等で調達でき、資材費は、1基7,762円で安価である。また、部品調整と現場(基幹農道から50m離れた急傾斜階段園)での運搬・組立・設置作業にかかる労賃を含めると9,129円である。なお、これらの作業時間は82分で、生産者が自分で施工できる。
  3. 天水槽の設置方法は、まず、地面を整地し、防草用黒ポリビニルを敷設する(図1)。次に、コンパネで水槽の側面を作り、直管パイプを35cm間隔で打ち込んで補強する。その後、ブルーシートを内側に固定し、蒸発防止用の黒ポリビニルを上面に、95%遮光ネットを全面に被覆し、風で飛ばないようにマイカー線等で結束する。
  4. 天水槽の設置数は、かん水量に応じて10aあたり幼木で4基、成木で8基設置する。
  5. 天水槽は、3月~梅雨入り前に園地の最上段に設置作業を終えることで、雨水を天水槽の上面から最大450mm(10aあたり2.8~5.6トン)集水できる。なお、黒ポリビニルと2重の遮光ネットの被覆により、蒸発量と貯水7か月後の藻の発生量は極めて少ない。
  6. 夏期までに園地内の点滴チューブ(圧力調整弁付)の配管作業を終えることにより、1樹あたり10~20mm相当量のかん水作業は、段畑の高低差の圧力を利用し実施できる。
  7. 天水槽と園地内の点滴チューブを用いたかん水作業は、旱ばつ時の慣行のかん水作業(生産者が容量1トンの貯水槽をトラックに積んで3キロメートル離れたダムまで3往復し、10aあたり1回2時間かけて動力噴霧器で行う手動のかん水作業)に比べて、作業時間を1/5に短縮できる(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. この技術は、水源のない急傾斜ミカン園および「ダイカンドラ」草生栽培園のほか、光反射マルチ栽培園に応用可能と考えられる。
  2. 本成果で示した組立式天水槽は、農家の関心が高く、現在製品化中である。
  3. 組立式天水槽の耐久年数は、遮光ネットの耐久性と同等の5~10年を想定している。
図表1 220562-1.jpg
図表2 220562-2.jpg
図表3 220562-3.jpg
カテゴリ 温州みかん 傾斜地 省力化

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