タイトル |
レッドデータブック掲載植物種数からみた山陰地方の草原環境の特徴 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
井上雅仁(三瓶自然館)
兼子伸吾(京都大学)
高橋佳孝
佐久間智子(中外テクノス)
太田陽子(北九州市立自然史
堤道生
渡邉園子(広島大学)
白川勝信(芸北高原の自然館)
歴史博物館)
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発行年度 |
2008 |
要約 |
島根・鳥取両県では、絶滅危惧植物種数は面積の大きな森林で最も多いが、単位面積当たり絶滅危惧植物種数は草原、湖沼等、砂浜で多くなる。草原はわずかな面積を保全することで多くの絶滅危惧種を維持できるという特徴がある。
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キーワード |
生育環境、草地、絶滅危惧植物、山陰地方
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背景・ねらい |
草地や里地里山など二次的自然に依存する生物多様性の消失が深刻化するなかで、効果的な保全策を講じていくためには、生育地や生育環境の持つ生物多様性上の重要度について、定量的かつ透明性の高い評価手法を確立することが重要である。そこで、絶滅危惧種の生育環境が類型化されている島根・鳥取両県の県版レッドデータブックを用い、絶滅危惧植物の生育環境を整理し、定量的に分析することによって、草原環境がもつ生物多様性保全機能を評価するための基礎情報を得る。
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成果の内容・特徴 |
- 島根県および鳥取県の県版レッドデータブック(以下、RDB)には、掲載種ごとに生育環境が類型化され表として記載されているが、生育環境の表記は両県で一致していない。そこでこれらの生育環境を表すキーワードを、「森林」、「草原」、「農地」、「湖沼等」、「砂浜」および「その他」の6つの生育環境カテゴリーに統合する(表1)。
- これらの生育環境カテゴリー別に絶滅危惧植物種数を集計し、各生育環境の単位面積(1kmメッシュ)当たり種数を算出して、生物多様性保全上の重要性評価の指標とする。各生育環境カテゴリー別の面積の算出には、環境省第5回自然環境保全基礎調査のメッシュデータを用いる(図1、表1)。
- 絶滅危惧植物の種数は、面積の大きな森林で最も多く(島根235、鳥取141)、次いで島根県では湖沼等(156)草原(60)農地(27)と続き、鳥取県では草原(90)、湖沼等(47)、砂浜(26)の順になる(図2)。
- 面積(1kmメッシュ)当たりの種数は、島根県では草原で最も高い値(1.43)を示し、続いて湖沼等(0.87)、砂浜(0.07)の順に、また、鳥取県では砂浜(1.86)が最も高く、草原(1.61)、湖沼等(0.90)の順につづく。一方、森林および農地の単位面積当たり種数は、両県とも小さな値(0.03-0.06)にとどまる(図2)。
- 以上の結果から、島根、鳥取両県における草原は、湖沼等(湿地を含む)や砂浜と同様に、生物多様性保全上わずかな面積を保全することで多くの絶滅危惧種を維持できるという特徴がある。
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成果の活用面・留意点 |
- 都道府県・地域レベルでの農業生態系修復事業や自然再生事業など、生物多様性保全対策を実施する際の基礎資料として活用できる。
- 生育環境カテゴリーが明記されていない都道府県版RDBで同様の解析を試みる場合には、RDBの本文の記載内容から生育環境キーワードを抽出する作業を要する。
- 生育環境評価の精度を向上させるためには、生育環境カテゴリーの細分化、特定環境への依存性、絶滅リスクなどの点からも解析を加える必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
評価法
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