タイトル |
暗渠排水中の窒素濃度簡易評価モデル |
担当機関 |
九州農業試験場 |
研究期間 |
1995~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
水田裏作圃場における暗渠排水中の窒素農度の作期内変動を所要の精度で再現し、実用的で取り扱いの容易な簡易評価モデルを開発した、このモデルは、まず複雑な窒素循環系のモデル化を行い、感度解析とモデル分析よって反応過程の一部を省略または集中化することによって、簡略化し再構築したものである。
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背景・ねらい |
農業地帯の水質保全計画の策定のためには農地からの窒素流出の推定が必要である。窒素流出特性は営農条件、水利条件などによって大きく影響され、また窒素循環が複雑で評価モデルも複雑なもとなりがちである。しかし、実用には取り扱いが容易で簡略なモデルの開発が必要である。そのためには圃場内の窒素循環に対する寄与の低い反応過程を省略または集中化し、窒素循環を大きく支配する反応過程を抽出してモデル化することが重要である。
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成果の内容・特徴 |
- モデル構成 モデルでは、施肥された土壌中の窒素循環を施肥窒素循環系と地力窒素循環系に分け、地力窒素循環系からは零次反応にもとづく一定量のアンモニア態窒素を施肥窒素循環系に供試し、施肥窒素循環系からは有機化過程を通して地力窒素循環系へ一部が移行するとともに作物、圃場排水によって系外へ出力される構造とした(図1)。このため、計算の初期化条件には実際の施肥量を与えて計算することが可能である。
- 簡略性 感度解析から、圃場内の窒素循環を大きく支配する窒素反応は、有機化、無機化および硝化であることが明らかとなり、その結果からこれらの窒素反応過程を抽出しモデル化した。そのため、必要なパラメータ数は表1に示すように、物質循環系内の反応に関わるものが10個、作物吸収、硝酸態窒素の溶脱に関わるものが2個と、パラメータ数が最少限に削減されたモデルである。
- 汎用性a.窒素循環系の各反応の温度依存に、Arrhenius則に基づく温度換算法を採用しているため、反応を律速する酵素反応が変わらない場合には夏作圃場の窒素循環問題に対しても適用できる。b.作物の窒素吸収パターンを定式化してモデルに組み込むことで、種々の作物に対しても適用可能である。c.施肥条件を外部入力項とすることで、分施など多様な施肥管理の圃場条件にも対応できる。
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成果の活用面・留意点 |
本モデルは圃場排水の大部分が暗渠排水によって行われる圃場に対して有効であり、圃場排水モデルと組み合わせることにより予測・評価が可能となる。そのうえで、農地から流出する窒素負荷の推定ならびに合理的な施肥計画の策定手法として活用できる。なお、本モデルおよび図2の計算例についての詳細は発表論文を参照されたい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
水田
施肥
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