流水式溶出試験による低質からの窒素、リンの溶出速度の推定法

タイトル 流水式溶出試験による低質からの窒素、リンの溶出速度の推定法
担当機関 九州農業試験場
研究期間 1995~1995
研究担当者
発行年度 1995
要約 底質からの溶出速度の測定方法として、流水式溶出試験法を提案した。この方法で得られた試験槽内の長期間の水質変化から、底質からの栄養塩の溶出速度を物質収支法と拡散解析法によって評価することができる。試験例では、窒素が底質表面での脱窒により負の値を示すなどの結果が得られた。
背景・ねらい 農業、農村地域の水質環境解析の際、水中の物質循環を把握することが重要であり、生態系モデルなど水質解析を行う場合には、底質からの溶出を水域に対する外部負荷として取り扱う場合が多く、底質からの栄養塩の溶出が水質に対して大きな影響を与える。そのため、底質からの溶出速度の評価が重要であり、その測定法について様々な方法が提案されているが、いずれも真の値を求めるのは困難である。
成果の内容・特徴
  1. 試験装置の特徴 試験装置は、長方形水路をベースに水位設定のため堰を設け、槽内の内部生産防止のため蓋で遮光した構造で、水路の底にクリーク底質土を敷き詰め、上流側から水を連続的に補給し、下流側からの流出水を採取し、これらから底質からの溶出速度を推定するものである(図1)。その特徴は、a.水理条件などの場のコントロールが容易であるため、現状の状態を再現しやすいこと、b.遮光のため、水中の物質挙動が単純であること、c.流水構造のため、槽内の完全混合が実現されること、d.長期間の実験が可能であること。本試験では、試験槽内の物質循環を把握するため、底質土を敷き詰めたものと敷き詰めないものの2系列で行った。
  2. 試験期間の設定 溶出は水中懸濁物の沈降による新鮮な堆積物の分解にともなう溶出が寄与するため、十分な試験期間を設定する必要がある。そのため、水中懸濁物の沈降・堆積及び分解によって新たに生成される底質状態がほぼ定常とみなせる期間を求める次式を試験期間の目安とする。
  3. 溶出速度の推定例 物質収支法から求めた溶出速度は図2に示すとおり、窒素、リンでそれぞれマイナス16ミリグラム・m-2・d-1、13.2ミリグラム・m-2・d-1であった。試験槽内は好気的であり、底質表層には明確な酸化層が確認されたが、窒素は溶出速度に対して脱窒速度が上回った。この場合、窒素の溶出速度は底質表面での脱窒を含んだ見掛けの溶出速度として設定する必要がある。拡散解析法で求めたリンの溶出速度は、拡散係数10-5平方センチメートル・s-1程度と評価され、静止溶液中の分子拡散レベルとほぼ等しく、試験槽内における水中の輸送速度にたいして小さいことから溶出は底質表層の拡散速度よりむしろ底質間隙水中の輸送速度に規定されると考えられる。
成果の活用面・留意点 溶出速度は温度関数となるため、適用に当たっては温度との関係を別途評価する必要がある。
図表1 220633-1.gif
図表2 220633-2.gif
図表3 220633-3.gif
カテゴリ 輸送

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