タイトル |
毛状根実験系におけるキタネグサレセンチュウの発育温量 |
担当機関 |
九州農業試験場 |
研究期間 |
1995~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
ラジノクローバー毛状根実験系を用い、キタネグサレセンチュウの温度依存発育経過を解明した。この線虫の発育零点は5.09度、有効積算温度は卵孵化まで177日度、雌成虫出現まで513日度、1世代完了まで564日度である。
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背景・ねらい |
キタネグサレセンチュウは根菜類等の生育阻害や品質低下の原因となる農業上重要な線虫であるが、移動性の生活様式をもつため個体の追跡調査ができず、特に温度に依存した発育特性値等(産卵数/日、発育零点、有効積算温度)が確定されていない。この線虫の各発育ステージの期間は、単独雌が閉鎖条件下で産下した卵からの幼虫と成虫の経時的出現頻度に基づき推定できる。培地上で自律的に成長するラジノクローバー毛状根を用いてこの線虫の発育温量等を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- この線虫の17度、20度、25度、27度及び30度における生活環完了期間(産下卵から次世代産卵開始)は、それぞれ46日、38日、28日、26日及び22日である(表1)。1雌当たり日あたり産卵数(y)と温度(x)との間には高い正の相関(r=0.968***)があり、その関係はy=0.3404+0.0537xの一次回帰式となる(図1)。
- 各培養温度における一世代期間の逆数(発育速度=y)と温度(x)との間には直線回帰関係が成立する(図2)。これから、本線虫の発育零点は5.09度(図2)、各ステージの有効積算温度は、産卵から孵化までの卵期間に177日度、産卵から雌成虫出現までに513日度、産卵から産卵までの一世代期間に564日度を要すると推定できる(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- この線虫の21度における一世代所要日数は寄主がジャガイモの場合もタマネギの場合も共通して35日と見積もられており(Wong and Ferris,1968)、本研究の発育温量から算出される21度の一世代所要日数と一致する。したがって、この実験系で得られたこの線虫の発育温量は寄主植物に影響されない普遍温量と考えられ、野菜類等の圃場における本線虫の発生予察研究の基礎データとして広く応用できる。
- 本研究で開発された毛状根閉鎖実験系を用いた推定手法は、ネグサレセンチュウ類をはじめとする移動性植物寄生線虫の発育温量等の推定に広く応用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
たまねぎ
ばれいしょ
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