少量の大豆粉を用いた近赤外分光分析によるリノール酸組成比の新しい推定方法

タイトル 少量の大豆粉を用いた近赤外分光分析によるリノール酸組成比の新しい推定方法
担当機関 九州農業試験場
研究期間 2000~2001
研究担当者 佐藤哲生(作物開発部上席)/高橋将一
松永亮一(大豆育種研)
発行年度 2000
要約 近赤外分光分析法により、少量の大豆粉を一粒カップに入れてスペクトルを測定すると、大豆粉のリノール酸組成比が、簡易・迅速に推定できる。九州農業試験場・作物開発部・上席研究官、大豆育種研究室(九州沖縄農業研究センター作物機能開発部上席研究官、大豆育種研究室)
背景・ねらい 育種の現場においては、収穫対象物中の成分含量の簡易迅速測定が望まれる。脂肪酸組成は、栄養面からも重要であるが、ガスクロマトグラフによる分析は、時間と手間がかかる。統計的手法(重回帰分析)を用いないで、近赤外スペクトルの吸収帯の形状に着目することで、大豆粉の近赤外分光スペクトルの特徴と脂肪酸組成との関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 小さい種子の近赤外測定に適用ができる一粒カップに、小さいスパテル一杯分(約8mg相当)程度の少量の大豆粉を入れ、近赤外スペクトルを測定すると、明瞭な近赤外スペクトルが得られる(図1)。測定時間は、フルスキャンで90秒である。
  2. 近赤外2次微分スペクトルを、移動平均4nm、スペクトルの和をとる「セグメント区間」12nmおよび、微分を計算するための「セグメント間隔」12nmで算出し、近赤外2次微分スペクトルの1600nmの値を0、1724nm付近の極小値を-1となるように換算すると、スペクトルの特徴が明確となる(図2)。なお、既定値パラメータで微分しても、区別できない。
  3. リノール酸が多い場合、1696~1724nmの領域の近赤外2次微分スペクトルの強度が下向きに強くなる(図2)。
  4. 1708nmの近赤外2次微分スペクトル値から、リノール酸の組成比が推定できる(図3-a)。
  5. 1708nmでは、リノレン酸の吸収帯も重なっており、リノール酸が増加すると、リノレン酸も増加するので、図中のプロットのズレが大きくなる。[リノレン酸+リノール酸]比と1708nmにおける近赤外スペクトル値との相関を求めると、相関係数が、-0.947となり改善される(図3-b)。オレイン酸の組成比は逆相関の関係にあり、同程度の精度で推定可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 波長スキャン型の近赤外分析器は、広く導入されており、この方法で得た成分値を指標に用いると、育種選抜、流通過程の品質評価、製造工程の品質管理の効率が向上する。
  2. 少量の大豆粉でも、大まかな脂肪酸組成が推定できるので、ミニドリル等を用い胚軸を傷つけないで大豆粉を調製できれば、発芽能を保持させたまま、脂肪酸組成を推定できる。
  3. 近赤外法で日常的に用いる重回帰分析ではなく、脂肪酸に帰属する吸収帯のスペクトル・パターンの特徴で解析するので、他の母集団を測定したデータにも適用可能である。
図表1 221650-1.jpg
図表2 221650-2.jpg
図表3 221650-3.jpg
カテゴリ 育種 近赤外分析 大豆

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる