タイトル |
堆肥吸着による脱臭システム |
担当機関 |
九州農業試験場 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
田中章浩
薬師堂謙一
嶋谷智佳子
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発行年度 |
2002 |
要約 |
堆肥化開始1~2週目の臭気の強い排気を、堆肥原材料と同体積の出来上がり堆肥へ通気させ、悪臭成分を堆肥に吸着させることで、臭気を大幅に低減すると共に、回収した窒素成分を肥料として有効に利用することができる。
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キーワード |
畜産環境、堆肥化、脱臭、アンモニア、牛
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背景・ねらい |
畜産経営に起因する苦情発生率は、地域住民の環境問題に対する意識の高まり等に伴って増加しており、中でも悪臭対策を早急に推進する必要がある。家畜排泄物の堆肥化過程における悪臭は、アンモニアが高濃度で不快なため苦情を招き易い。既存の多くの脱臭装置は設備費が高く、また、ランニングコストも高額となっている。そこで、ローダー切返し方式の通気型堆肥舎での乳牛糞とオガクズを原材料とした堆肥化過程を対象とし、堆肥の悪臭成分吸着能を活用しアンモニアを硝酸態窒素などの形で回収して肥料成分として再利用する、悪臭防止技術を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 脱臭システムの構成は、悪臭を吸着処理させる堆肥吸着槽、吸着済み堆肥を無臭化する槽、臭気を堆肥化槽から堆肥吸着槽まで送るための配管とブロワ及び結露水を回収するシステムである。運転方法は、原材料(44m3)と同体積の堆肥化から半年程の出来上がり堆肥を1、2週目吸着槽へ投入し、1次発酵1、2週目槽からの臭気を床面から導入する。吸着用堆肥は、夏期には1週目槽で1週間、2週目槽で2週間毎、また冬期には1週目2週間、2週目4週間程度毎に交換する。吸着済み堆肥は、無臭化槽において好気状態で1週間養生させる(図1)。
- 堆肥化槽から吸着槽までの配管部分において、1、2週目それぞれ夏期61L/週、冬期214L/週の結露水が生じる。結露水は、夏期には堆肥化3、4週目の材料、冬期には吸着堆肥に混合、或いは飼料畑等で液肥として使用することで、窒素成分を有効利用できる。
- 夏期及び冬期を通じた悪臭物質の平均除去率は、アンモニア97%、硫黄化合物86~95%、また、プロピオン酸で87%の増加を示したが、他の低級脂肪酸では22~59%である(図2)。
- 処理後である吸着堆肥直上においてアンモニアおよびn-酪酸の濃度が、規制値の1.3倍(6.4ppm)及び1.4倍(8.3ppb)と若干高いが、外気による希釈で敷地境界線では検出されない。
- 一定期間吸着させた堆肥は無臭化槽において1週間通気を弱く行うことで、アンモニア態窒素が硝化され、アンモニア臭をなくすことができ再度吸着可能となる(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 牛糞とオガクズを原材料とした堆肥化における、脱臭技術として活用できる。
- 悪臭を吸着堆肥へ導入するための配管中で結露水が生じるため、定期的にポンプで結露水を排出する必要がある。
- 同一吸着堆肥を長期間使用すると硝酸態窒素濃度が高くなるので、吸着回数に留意すると共に、農地還元する際に出来上がり堆肥に混合、或いは高濃度窒素の有機肥料的に使用するなど留意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
土づくり
肥料
経営管理
コスト
乳牛
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