タイトル | ノニルフェノールは牛末梢血リンパ球画分の熱ショックタンパク質発現を抑制する |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 | 1999~2002 |
研究担当者 |
田中正仁 岩間裕子 神谷充 塩谷繁 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 高温処理に対して牛末梢血リンパ球で発現する熱ショックタンパク質(HSP)はノニルフェノールにより発現が抑制される。また、その発現抑制反応は温度に依存し、還元型グルタチオンおよびアスコビン酸添加で緩和される。 |
キーワード | 家畜生理・栄養、乳牛、耐暑性、熱ショックタンパク質 |
背景・ねらい | 内分泌かく乱物質の一つとして知られているp-n-ノニルフェノール(NP)の生体に対する作用については、魚類等に対するメス化作用以外はほとんど解っていない。しかし、その化学物質としての人を含めた高等動物に対する影響解明が強く求められている。そこで、細胞・個体の耐熱性因子であるHSP発現に及ぼすNPの影響に着目し、牛個体から回収したリンパ球画分に各種濃度のNPを作用させ、HSP発現に及ぼす影響を検討し、その作用を緩和する生体成分の検索を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1. 乳牛の頸静脈から採取したヘパリン血より比重遠心法で回収したリンパ球画分に各種濃度のNPを作用させ、43℃、30分の高温処理を行い、その後熱ショックにともない特異的に合成されてくるHSP(HSP72、HSP27)と無処理区のHSPをウェンタンブロットで検出し、両者の比をHSP発現誘導比とする(図1)。 2. 高温処理によって発現するHSP72はNPで抑制され、その発現抑制率は図2に示すようにNP濃度の増加によって上昇する。 3. HSP72およびHSP27発現抑制のNPに対する感受性を表すKm値は、反応温度の影響を受け、反応温度が38℃の時よりも43℃で顕著に小さくなる(表1)。これは、同じ濃度のNPであっても環境温度が高い場合に、より低濃度で強い影響がでることを示唆している。 4. HSP72のNPによる発現抑制は、還元型生体成分である還元型グルタチオンおよびアスコルビン酸の添加で緩和される(図3)。 5. 以上から、生体中に高濃度に蓄積したNPはHSPの発現を抑制することで生体の高温適応性を障害する可能性が示唆されるが、その作用は還元型生体成分の投与によって緩和される可能性がある。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 生体への作用解明が急がれるNPの作用の一つとして活用できる。 2. 環境中では常に複数の化学物質が相互作用しているので、今回得られた実験データから環境影響を考える場合には注意が必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 耐暑性 乳牛 |