タイトル | ホウ素は植物細胞壁でペクチンを架橋して働く |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 | 1999~2002 |
研究担当者 |
松永俊朗 石井 忠(森林総研) |
発行年度 | 2002 |
要約 | 植物の必須微量元素であるホウ素の主な働きは、細胞壁でペクチンをラムノガラクツロナンII-ホウ酸複合体の形で架橋して、細胞壁構造を安定化することである。 |
キーワード | ホウ素、ペクチン、ラムノガラクツロナンII |
背景・ねらい | ホウ素は、植物の必須微量元素であるが、その分子レベルでの機能は不明であった。近年、植物細胞壁中のホウ素は、一分子のホウ酸が二分子のペクチン性多糖ラムノガラクツロナンII単量体(mRG-II)を架橋したラムノガラクツロナンII-ホウ酸複合体(dRG-II-B)の形で存在することが明らかにされた。そこで、植物細胞壁中でのdRG-II-B複合体の役割を検討した。 |
成果の内容・特徴 | 1. テンサイ細胞壁をイミダゾール-塩酸抽出すると、ホウ素を含むペクチンが得られる。このペクチンを、ホモガラクツロナン(HG)を分解するエンドポリガラクツロナーゼで処理すると、dRG-II-Bが得られる(図1)。したがって、RG-IIは、細胞壁ペクチンの主成分であるHGと共有結合している。 2. カボチャをホウ素が十分にある培地(25μM)で水耕栽培したとき、葉の細胞壁中RG-IIは、大部分がdRG-II-B複合体である(図2 B+)。一方、ホウ素を除いた培地で栽培したとき、ホウ素欠乏症状を示した葉の細胞壁中dRG-II-B量は減少し、mRG-II量が増加する(図2 B-)。そのホウ素欠乏植物を、10Bラベルしたホウ酸を含む培地に移すと、吸収されたホウ酸は、生成されたdRG-II-B複合体に取り込まれる(図2 B- +10B)。それに伴い、緩んでいた細胞壁構造が引き締まることが観察される(図3)。 3. 以上のことから、ホウ素の主な働きは、細胞壁でペクチンをラムノガラクツロナンII-ホウ酸複合体の形で架橋して、細胞壁構造を安定化することである(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ホウ素の栄養診断や施肥法などの開発に役立つ。 2. 種子植物全般に、適用可能である。 3. 架橋とは、鎖状高分子の分子間で、橋を架けるように化学結合を形成させることをいう。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 栄養診断 かぼちゃ 水耕栽培 施肥 てんさい |