タイトル |
水稲機械作業の組織化が地域及び農家の所得に及ぼす効果 |
担当機関 |
鹿児島農試 |
研究期間 |
2003~2003 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2003 |
要約 |
水稲部門をもつ複合経営の大規模農家と中小規模農家からなり、複合作物部門と水稲部門の作業が競合する地域では、水稲の機械作業を組織化し、全農家の労働力を有効利用する地域営農システムによって、地域全体および各農家の所得拡大が可能である。
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キーワード |
水田営農、組織化、地域営農モデル、線形計画法
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背景・ねらい |
米価の下落によって水稲の収益性が低下しつつある中で、水稲専門の大規模農家の育成が難しい地域では、地域営農の組織化と組織経営体への育成が求められている。 そこで、M町S地区を対象とし、アンケート調査をもとに地域の農家を5類型に類型化し、全営農類型を組み込んで地域全体の所得の最大化を計画目標とする線形計画法で、組織化前後の2種類の地域営農モデルを策定する。次にそのモデルを用いて、水稲部門および水稲と作業競合する複合作物部門をもつ複合経営の大規模農家(水稲面積が約2ha以上)と中小規模農家(約1ha程度またはそれ以下)からなる地域において、水稲機械作業の組織化が地域及び各農家の作物構成と所得に及ぼす効果について検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 表1、表2、表3で与えられた前提条件をもとに、各農家が水稲用農業機械を所有し個別作業による水稲作を行っている地域の現状を想定して作成した「個別作業」モデル(表4)では、「水稲+サトウキビ大規模」と「水稲+繁殖牛大規模」類型の農家の水稲面積は下限制約の下限値であり、「水稲+ソラマメ大規模」類型の農家は実態面積に近い203aの水稲面積が最適である。このことから、今後、大規模経営へさらに水田を集積しての水田営農維持は困難である。
- 大規模農家を含む全農家の水稲の機械作業を地域営農組織が受託し、全農家の出役で作業を実施する「全農家組織化」モデル(表4)では、大規模農家は複合部門が規模拡大し、水稲用農業機械への過剰投資回避効果も併せて、水稲面積を維持しながら所得増加が可能である。中小規模農家も水稲用農業機械の過剰投資回避や出役労賃によって所得が増加するので、全営農類型で所得が増加する。
- 「個別作業」モデルと「全農家組織化」モデルの労働集中時期(植付時期と収穫時期)における労働時間の利用状況を比較すると、組織化によって大規模経営では複合作物に利用する労働時間が増加している。これは、「個別作業」モデルで各営農類型に存在する余裕労働時間の有効利用によるものと考えられ、特に多くの類型で労働がひっ迫する植付時期は「水稲中小規模」類型農家の貢献が大きい(図1、図2)。
- 地域全体の所得増加33,115千円の発生要因は、プロセス純収益の増加が13,322千円、固定費の減少(機械投資の削減)が19,794千円となる。(表4)。
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成果の活用面・留意点 |
- この成果は、水稲の収益性が低く、水稲部門をもつ複合経営の大規模農家と中小規模農家からなる地域において、今後の方向性を検討する素材として活用できる。
- 今回作成したモデルに生産調整や自給飼料の設定を組み込むことによって、さらに対象地域に適合したモデル作成が可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
規模拡大
経営管理
さとうきび
水田
水稲
そらまめ
大規模経営
繁殖性改善
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