タイトル |
極強稈・多収の極晩生飼料用水稲新品種「タチアオバ」(旧系統名「西海飼253号」) |
担当機関 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
1996~2005 |
研究担当者 |
坂井 真
岡本正弘
田村克徳
梶 亮太
平林秀介
溝淵律子
深浦壮一
八木忠之
西村 実
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発行年度 |
2005 |
要約 |
水稲「タチアオバ」は、耐倒伏性が極めて強く,地上部全重が極多収でホールクロップサイレージ用に適した極晩生種で,極長稈で主食用水稲品種との草姿による識別が容易である。
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キーワード |
飼料イネ、ホールクロップサイレージ、品種
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背景・ねらい |
飼料イネは、水田を有効利用した飼料自給と、耕畜連携による資源循環型畜産の実現のための水田飼料作物として期待されている。畜産業が盛んな九州では飼料イネの栽培が早くから普及し、全国の作付のうち約半分が集中している。しかし、九州で作付けの多い「モーれつ」は脱粒しやすく、また大分県で普及している「ニシアオバ」は耐倒伏性に難点があり平坦肥沃地での普及に問題がある等、現行の専用品種には欠点もある。そこで、耐倒伏性に優れ直播栽培が可能で、かつ地上部全重が重く、サイレージ品質が良好な九州地域向けの飼料イネ専用品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- 「西海飼253号」は、直播適性を有する飼料イネ品種を目標に、晩生で生育量の多い「は系906」を母とし、 LEMONT(アメリカの直播用品種)の太根性を導入した「(47-1-1(F2)/95SH50)F1」を父として行った組み合わせから九州沖縄農業研究センターで育成された(表1)。
- 出穂期、成熟期は「ミナミヒカリ」よりそれぞれ5日、10日程度遅く、九州地域では“極晩生”に属する粳種である。「ミナミヒカリ」に比べ、稈長は20cm程度長く、穂長も約5cm長く、穂数は少ない。草型は“穂重型”で、極長稈で一般主食用とは明らかに異なる草姿から圃場での識別は容易である。
- 太稈・太根性を有し、耐倒伏性は“極強”であり、直播栽培における転び型倒伏抵抗性も強い。いもち病真性抵抗性遺伝子“Pia、Pii ”を持つと推定され、葉いもちおよび穂いもち圃場抵抗性はそれぞれ“中”、“やや強”である。白葉枯病圃場抵抗性は“やや弱”である。縞葉枯病には抵抗性を有する。脱粒性は“難”で、穂発芽性は“中”である(表2)。
- 全重は「ミナミヒカリ」よりも早植えで約25%、普通期栽培で約15%重く、早植えでは乾物収量2t/10aを超す多収が得られる。推定TDN(可消化養分総量)含量は主食用品種と同程度で、早植えでの推定TDN収量は「ミナミヒカリ」より20%以上高い(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 立毛での識別性を備えた飼料(ホールクロップサイレージ)用品種として九州地域などで利用でき、特に平坦肥沃地での早植(イタリアン等の後作)、普通期(麦後作)や直播に適する。
- 飼料作物として平成18年度から福岡県等で普及が予定されている。
- 極晩生種であり、また出穂から黄熟期までの日数がやや長いので、それを考慮した水管理と収穫時期設定を行う。
- 白葉枯病の圃場抵抗性は強くないため、常発地帯では作付けしない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
いもち病
直播栽培
縞葉枯病
飼料作物
飼料用作物
新品種
水田
水稲
抵抗性
抵抗性遺伝子
品種
水管理
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