過剰排卵処理排卵前卵胞吸引による成熟卵子回収と黄体形成およびその受胎性

タイトル 過剰排卵処理排卵前卵胞吸引による成熟卵子回収と黄体形成およびその受胎性
担当機関 佐賀畜試
研究期間 2004~2005
研究担当者
発行年度 2005
要約 繁殖雌牛に過剰排卵処理を行い、発情観察後排卵前の大型卵胞を経腟採卵により吸引することで第1極体の放出した成熟卵子の回収が可能である。また、吸引7日後には受精卵移植可能な黄体が複数形成され、移植後受胎を認める。しかし、不受胎例においては、黄体数および血中プロジェステロン濃度が高い傾向にある。
キーワード ウシ、過剰排卵処理、卵胞吸引、黄体形成、受精卵移植
背景・ねらい 繁殖雌牛の空胎期間を利用した受精卵生産のための処理を実施した場合、その雌牛を再び繁殖へ供し受胎させるには、処理後の新たなる卵胞波の出現と、それに続く発情が発現するまで個体により様々な期間を要する。一方、経腟採卵により生体内卵巣卵胞の吸引を実施しても、一部の卵胞を除いては黄体を形成することはない。
そこで、繁殖雌牛から採取した卵子の体外受精による受精卵生産と、その雌牛自身の発情周期を同期化させ、新鮮卵移植により受胎させることを最終目的とし、ここでは過剰排卵処理技術および経腟採卵技術を組み合わせて、体外受精を念頭においた体内成熟卵子の回収が可能か、また自然排卵を伴わずに黄体を形成するかを検討する。
成果の内容・特徴
  1. 繁殖雌牛に過剰排卵処理を行い、発情観察翌日に排卵前の大型卵胞(長径8mm以上)を経腟採卵により吸引することで、10.1±6.1個の卵子を回収することができる(表1)。
  2. 卵胞吸引7日後に超音波診断画像下で10.3±3.9個の黄体が観察される(表1)。
  3. 回収卵子の5.7±4.0個(総回収比56.3%)で卵丘細胞の膨化が認められる。さらにこの卵丘細胞が膨化した卵子で第1極体の放出(総回収比45.1%)が観察される(表2)。
  4. 卵胞吸引3日後および7日後には、血中プロジェステロン濃度が、それぞれ15.0±11.3ng/mlおよび44.7±24.9ng/mlとなり、発情期と比較して有意に上昇する(図1)。
  5. 卵胞吸引7日後に受精卵移植を実施することで受胎例が得られる(表3)。
  6. 不受胎例では、受精卵移植時の黄体数および血中プロジェステロン濃度が、それぞれ12.0±3.0個、54.5±22.0ng/mlであり、受胎例の6.0±1.0個、20.1±8.9ng/mlに対して高い傾向にある。しかし、1黄体あたりの血中プロジェステロン濃度は同程度である(表4)。
成果の活用面・留意点
  1. 経腟採卵を午前中に実施し、その日の午後に体外受精を実施すれば、同一雌牛の移植可能な受精卵が短期間に生産できる。
  2. 経腟採卵によって未成熟卵子を回収した場合は、体外成熟培養を要する。
  3. 大型卵胞内は多量の卵胞液と粘着力のある卵丘細胞で満たされているため、完全に卵胞液を吸引するように心がける。
  4. 排卵前の大型卵胞の経腟採卵においては、卵巣表面への穿孔の有無によらず、形成する黄体の直腸検査所見は、自然排卵時と同様の所見である。

図表1 222984-1.jpg
図表2 222984-2.jpg
図表3 222984-3.jpg
図表4 222984-4.jpg
図表5 222984-5.jpg
カテゴリ 受精卵移植 繁殖性改善

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