タイトル | 熊本県白川中流域の転作田への夏季の水張りは地力を増進させる |
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担当機関 | (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 | 2005~2006 |
研究担当者 | |
発行年度 | 2006 |
要約 | 白川中流域の営農の一環として行われる転作田への夏季の水張りにより落水後は土壌肥沃度が増大し、夏まきニンジンを無肥料で栽培できる。脱窒により地下浸透水の硝酸態窒素濃度は低下する。 |
キーワード | 白川中流域、湛水、地下水涵養、地力、転作田、ニンジン |
背景・ねらい | 白川中流域の水田地帯は熊本市圏の地下水の主要な涵養域である。熊本市は白川中流域の大津町、菊陽町らと地下水保全協定を結び、夏まきニンジンやダイズの作付け前に営農の一環として転作田に水張りを実施する地元農家に対し助成金を支払う事業を開始した。一方、事業に参加している地元農家からは湛水に伴う養分の溶脱による地力の低下の懸念が表明されている。そのため5月~7月の夏季3ヶ月間の湛水が土壌肥沃度に及ぼす影響について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1.湛水する前に比べて作土の交換性塩基含量は増加する(表1)。交換性石灰・苦土の増加量は苦土石灰換算で約300kg/10aである。これは灌漑水には小林(1960)により報告された九州43河川の平均値(Ca;10mg/L、Mg;2.7mg/L、K;1.84mg/L)を大きく上回る濃度のカルシウム(Ca;25.3mg/L)、マグネシウム(Mg;6.86mg/L)、カリウム(K;6.29mg/L)が含まれ、これら塩基の天然供給力が多いことによると考えられる。 2.湛水する前に比べて作土の硝酸態窒素(図1)、培養後無機態窒素、可給態リン酸(表1)は維持ないし増加する。これは、田面に藻類が繁茂することや畑状態に比べて有機物の消耗が抑制されること等によると考えられる。 3.湛水開始1日後の土壌水の硝酸性窒素(NO3-N)濃度は、水口付近で7.3mgL-1、水尻付近で7.4mgL-1と灌漑水より大きいが、その後は脱窒により、土壌水のNO3-N濃度は、灌漑水の濃度を下回る(図2)。圃場からの硝酸態窒素溶脱による地下水の硝酸性窒素の正味の富化は無いかきわめて小さい。 |
成果の活用面・留意点 | 1.湛水期間は代掻きをし、灌漑水をかけ流しした。流入量は500mm/日、それに対して流出量は240mm/日であった。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 肥料 水田 大豆 にんじん |