タイトル |
ナシ生育初期の簡易被覆栽培による黒星病に対する殺菌剤低減効果 |
担当機関 |
佐賀果樹試 |
研究期間 |
2001~2006 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2007 |
要約 |
ナシの早期出荷のために行われている生育初期の簡易被覆栽培(トンネル栽培)は重要病害の黒星病に対する殺菌剤低減技術として有効である。
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キーワード |
ナシ、黒星病、減農薬、簡易被覆栽培、トンネル栽培、殺菌剤
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背景・ねらい |
九州地域のナシ栽培では、品種「幸水」を中心に早期出荷を目的として、生育初期(2月中旬~5月中旬)のみをビニル被覆する簡易被覆栽培(トンネル栽培)が広く普及している。 本栽培法では、5月中旬にビニルを除去しその後は露地状態となることから、これまでは露地栽培と同じ頻度で殺菌剤散布が行われてきた。そこで、簡易被覆栽培(トンネル栽培)を行うことにより、殺菌剤散布回数を低減しても九州のナシ栽培で最も問題となる黒星病の発生を抑制できるかどうかを明らかにし、殺菌剤の使用低減を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 2002年~2006年の現地実証試験の結果(本成果では2004年の結果のみを示した)、露地栽培では慣行防除体系(年間平均殺菌剤成分数16)、減殺菌剤防除体系(成分数11)ともに黒星病に対する効果は不安定で、実用上問題となる平均発病果率2.0%を越える園があった。これに対して、生育初期のみビニル被覆を行う簡易被覆栽培(図1)を行った園では、慣行防除体系(成分数15)、減殺菌剤防除体系(成分数11)ともに黒星病の発生をほとんど認めず(発病果率0.2%以下)、殺菌剤の使用を減らしても安定して高い防除効果が得られることが明らかになった(表1)。
- 以上のような結果から、生育初期のみビニル被覆を行う簡易被覆栽培(図2)は、早期出荷のみならず、黒星病の発生を著しく抑え、ナシの減殺菌剤防除技術としても有効な手段であるといえる。開花前後の4月は本病の重要感染時期にあたり、この時期の降雨を遮断することで発病を著しく抑えることができる
- これまでの慣行防除体系では、発芽から収穫までに7~10日毎の定期的な薬剤散布が行われている。これに対して、佐賀果樹試が提唱している簡易被覆栽培における減殺菌剤防除体系は、ビニル被覆期間中の散布回数を減らすとともに、ビニル除去~6月中旬までを、薬剤散布後の経過日数(14日)と累積降雨量(100~150mm)を指標に薬剤散布を行う体系である(表2)。本防除体系で、輪紋病、赤星病、炭疽病等の病害についても十分に防除できる(データ略)。
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成果の活用面・留意点 |
- 特別栽培農産物の生産等、ナシでの減農薬を図る際に活用できる。
- 簡易被覆栽培を行ったとしても、川や湿地のそばなど、夜露や雨滴が乾きにくい園では十分な発病抑制効果が得られない場合があるので注意が必要である。
- 薬剤散布後の累積降雨量を計測するためには、マシン油乳剤の空き容器等を利用すると便利である。
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図表1 |
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カテゴリ |
病害虫
黒星病
出荷調整
そば
炭疽病
農薬
品種
防除
薬剤
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