タイトル |
南九州シラス台地上の多腐植質厚層黒ボク土畑における年間浸透水量 |
担当機関 |
鹿児島農開セ大隅支場 |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2007 |
要約 |
土壌保水量の実測に基づく水収支法によって推定される無植生条件の多腐植質厚層黒ボク土畑における1m深を通過する年間浸透水量は、年間降水量(2536mm)の約65%である。また、春夏作期間は秋冬作期間よりも浸透水量が多く浸透率も高い。
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キーワード |
多腐植質厚層黒ボク土、水収支法、浸透水量
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背景・ねらい |
南九州では家畜ふん尿の発生量が極めて多く、さらに冬期の温暖な気象を活かし、年間を通した作付けが多いなど、農業由来窒素の潜在的発生量が多い。一方年間降水量は約2,400mmと多雨であるため、硝酸態窒素の地下水への溶脱が助長されやすい環境にある。農地における土壌水の動態や水収支の解明は、農業由来窒素の地下水への影響の削減を図る上で重要である。そこで、南九州シラス台地上の多腐植質厚層黒ボク土畑における年間浸透水量と浸透率を水収支法で推定する。
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成果の内容・特徴 |
- 対象土壌における1m深を通過する浸透水量は、土層1mの保水量を考慮した水収支法(式1)により推定する。土層1mの保水量の変化量は、地表下10~100cmの10cm深毎のマトリックポテンシャルの実測値から、van Genuchten(1980)式(式2)を用いて、それぞれの体積含水率を求めて、対象とする解析期間前後の差として算出する。
- 解析対象の降雨イベントは、4mm/日以上の降雨を対象として、1m深を通過する浸透水量は、降雨イベントに対する降雨後2日における保水量増減の応答の積算と考える。
- 1m深を通過する浸透水量は、調査2カ年の平均で1,651mmと推定され、年間降水量2,536mmの約65%に相当する(表1)。
- また1m深を通過する浸透水量は、2002年度調査の3~10月が1,202mm、11~2月が388mmで、期間浸透率はそれぞれの約70%と約50%、一方2004年度調査の浸透水量は6~10月が1,153mm、11~5月が559mmで期間浸透率はそれぞれの約70%と約60%となり、いずれの調査期間においても、3・6月~10月の春夏作期間は11月~2・5月にかけての秋冬作期間に比べて浸透水量が多くかつ浸透率も高い(表1)。
- 可能蒸発散位(ペンマン法)に対する水収支法で求めた土壌蒸発量の比は0.67で、これは土壌面蒸発が卓越する播種・定植期の多くの畑作物に対する作物係数0.7と近似しており、概ね妥当な値と判断できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 調査場所は、笠野原台地に位置する大隅支場の地表下80cm以下にアカホヤ層がみられる多腐植質厚層黒ボク土畑であり、無植生条件で調査した。
- 表面流出率は、緩傾斜裸地ほ場における試験に基づき、9.1%(年間)とした。カンショ・無マルチ条件(6-11月)で11%、カンショ・マルチ条件(6-11月)では25%前後の結果を得ており、マルチ栽培条件下では地表流出が倍増し、浸透水量が減少するものと見込まれる。
- 笠野原台地畑における硝酸性窒素溶脱モデルの構築等を図る上での基礎資料として活用できる。
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図表1 |
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カテゴリ |
かんしょ
栽培技術
栽培条件
播種
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