タイトル |
イネ抵抗性遺伝子解析に利用できる品種加害性の異なるイネウンカ類飼育系統 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2007~2008 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2008 |
要約 |
1966年~2005年に採集したトビイロウンカ飼育系統は、それぞれ採集時における品種加害特性を保持している。セジロウンカ飼育系統の品種加害特性も採集年次によって異なる。これらのイネウンカ系統はイネ抵抗性遺伝子の解析に利用できる。
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キーワード |
トビイロウンカ、セジロウンカ、抵抗性遺伝子、品種加害性、飼育系統
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背景・ねらい |
抵抗性品種の利用は、環境負荷の少ない病害虫防除手段として多くの場面で利用されている。水稲においても、1970年代以降、トビイロウンカの抵抗性遺伝子を導入した品種が開発されてアジア地域一帯で利用されている。しかし、同一の抵抗性品種の継続的利用によって、イネウンカ類は抵抗性品種に対して加害性を獲得する。例えば東アジア地域のトビイロウンカは、1990年頃に抵抗性遺伝子Bph1を持つ品種に加害性を示すように変化し、1997年以降には抵抗性遺伝子bph2を持つ品種にも加害性を示すようになった(寒川、1992、Tanaka & Matsumura、1999)。九州沖縄農業研究センターでは、1960年代以降の異なる年代に日本で採集したイネウンカ類系統を累代飼育で維持している。もし、これらの飼育系統が採集時点における抵抗性品種加害特性を変わらずに保持していれば、これらの系統は抵抗性遺伝子の解析に利用可能である。そこで、トビイロウンカとセジロウンカの累代飼育系統について、品種加害性を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- トビイロウンカの1966年採集系統は、抵抗性遺伝子を持つ判別品種のいずれに対しても加害性を持たない。1989年採集系統は、Bph1を持つ判別品種のみに対して加害性を持つ。1999年および2005年採集系統は、Bph1とbph2を持つ判別品種に対して加害性を持つ(表1)。
- これらの採集系統の加害性は、東アジア地域におけるトビイロウンカの抵抗性加害性の変化とほぼ一致することから、長期の累代飼育によって抵抗性品種に対する加害性は変化しなかった。
- セジロウンカの1989年採集系統は、セジロウンカ抵抗性遺伝子を持つ判別品種のうち、抵抗性遺伝子Wbph1を持つ品種のみに対して加害性を持つ。1999年および2005年採集系統は、Wbph1とWbph2を持つ品種に対して加害性を持つ(表2)。
- セジロウンカ抵抗性遺伝子を持つ品種に対する加害性の年次変化については、過去の調査データはないが、上記3の結果から、Wbph2を持つ品種に対するセジロウンカの加害性は、1989年から1999年の間に変化したものと考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- トビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph1およびbph2、セジロウンカ抵抗性遺伝子Wbph1に対して加害性が異なる飼育系統は、これらの抵抗性遺伝子の解析や、これらの遺伝子に染色体上で近い位置にあるような他の抵抗性遺伝子の探索及び解析の際に利用できる。
これらの飼育系統は九州沖縄農業研究センターで維持しており、必要に応じて分譲可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
病害虫
抵抗性
抵抗性遺伝子
抵抗性品種
病害虫防除
品種
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