イネの発育にともなう蒸散特性の変化のモデル化

タイトル イネの発育にともなう蒸散特性の変化のモデル化
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2008~2008
研究担当者
発行年度 2008
要約 水田における蒸散のコンダクタンスはイネの発育に強く依存しており、その最大値の変化は発育ステージの簡易な関数でモデル化できる。
キーワード イネ、気孔コンダクタンス、蒸散、発育ステージ
背景・ねらい
    植物群落における蒸散のコンダクタンス(バルク気孔コンダクタンス)は植生-大気間の熱・水・物質交換を支配する要因である。これまで、各種植物のバルク気孔コンダクタンスと環境要因(日射、土壌水分など)の関係が数式化されてきたが、植物自体の発育(フェノロジーの変化)との関係は数式化されてなかった。そのため、陸面モデルなどによる植物の温度や蒸散量、光合成量の計算では発育ステージによる違いは定量化できず、温暖化や作期移動のそれらへの影響評価でも発育の変化による間接的な影響が評価できなかった。そこで、水田における長期観測から、バルク気孔コンダクタンスとイネの発育ステージの関係を明らかにし、両者の関係を結びつける簡易なモデルを作成することで、発育の影響を考慮した植物の温度や蒸散量、光合成量の評価を可能とした。
成果の内容・特徴
  1. 異なる作期の水田における熱フラックスの長期観測から、バルク気孔コンダクタンスの日変化と季節変化を調べたところ、個葉と同様に単位葉面積あたりの吸収日射量が大きいほどコンダクタンスは大きくなる。(図1)
  2. 吸収日射量が十分に大きいときのバルク気孔コンダクタンスの最大値はイネの発育に強く依存する(ここでは、発育ステージを単純に移植~出穂、出穂~成熟の日数で線形変換)。その値は、分げつ期から出穂期にかけて約0.06ms-1から約0.02ms-1へと低下し、さらに登熟期に約0.01ms-1前後まで低下する。(図2)
  3. バルク気孔コンダクタンス(gs)は、任意の発育ステージ(DVI)と単位葉面積あたりの吸収日射量(Sabs)に対する関数で表すことができる(式1および式2)。このモデルを陸面モデルに組み入れることで、イネの発育を考慮した植被温度や蒸散量、光合成量の定量的な評価ができる。イネの発育の影響によって、登熟期は出穂以前よりも蒸散量と光合成量が小さくなりやすく、植被温度は高くなりやすいと考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 植物の発育と群落の熱交換特性を結びつける知見である。陸面モデルあるいは作物モデルのサブモデルとして用いることで、温暖化や作期移動が耕地の熱環境や水需要、乾物生産に及ぼす影響評価において、発育の変化の影響を考慮した評価ができる。
  2. モデルの経験的なパラメータの値はイネ(コシヒカリ)で得られたものである。パラメータの値を実験的に求めることによって、他の植物にも適用可能である。
図表1 223698-1.jpg
図表2 223698-2.jpg
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図表4 223698-4.jpg
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カテゴリ 水田

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