タイトル | 中山間地域における農産物の加工・販売動向 |
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担当機関 | 農業研究センター |
研究期間 | 1996~1996 |
発行年度 | 1996 |
要約 | 加工品の形態で最も多いのは漬物であり、次いで味噌、菓子、ジャム、ジュースとなる。市町村当たりの加工組織数は12.8カ所、従事者数は28人、また、年間就業日数は69日と零細である。生産見通しは増加傾向にあり、地域間競争の激化が予想される。 |
背景・ねらい | 地域の基幹産業である農業を振興するためには、地域内で生産される生鮮物の付加価値を高め、有利に販売することが重要である。そこで、農産物の加工形態や原材料の調達方法、加工を担う組織の形態、販売方法、加工販売に伴う現在の問題点、加工品の生産見通しについて、全国の中山間市町村を対象としたアンケート調査(平成6年12月実施、回収率75%)を実施した。(本調査での中山間地域とは市町村全体もしくは一部地域が特定農山村法地域及び振興山村地域となっている市町村をいう。ただし、人口が平成4年度において5万人以上の市については都市部のデータが混在するため除外している。) |
成果の内容・特徴 | (1)加工品の形態 加工品の形態で最も多いのは漬物で、32.8%を占めている。また、上位5品目で加工品数の60%を占める(表1)。作物類別の加工品形態は、米・雑穀・豆類が加工品全体の25.6%を占め、その形態は味噌、菓子、麺類などである。2番目に多いのは果実類である。一方、作物別の全加工品数に占める比率と主要加工品の形態は、大豆が10.3%で味噌が71%、大根が8.1%で漬物が91%、米が7.9%で餅が43%となる。4番目以降の作物は、ユズ、うめ、麦、コンニャク、きゅうり、ふきと続く。 (2)原材料の調達方法 市町村内からの調達率が77%を占め、この内訳は個人が55%、農協・森林組合が24%、集落ぐるみ共同組織が8.6%などである。市町村外からの調達率は県内の他市町村が13%、県外が5%、外国が2.5%である。 (3)加工を担う組織の形態 全国では個人組織が36.7%、集落ぐるみ共同組織が17.7%、農協等が17.2%となるが、農業地域別には各組織の比率が大きく異なる(表2)。市町村当たり加工組織数は12.8カ所、従事者数は28人で年間就業日数は69日である。組織を個別にみると年間雇用もみられるが、これらは一般には食品企業であり、地域の生産物を主な原料とした加工が必ずしも行われているわけではない。農産物による地域の活性化は生産・加工・販売が地域内で連鎖することが重要であり、そのためには、高品質化や、季節毎に平均化した作物生産を行うなどの努力が必要である。 (4)加工品の販売方法 多い順番にあげると、農協等への出荷、観光みやげ店、商社等へ出荷、産直、個人直売所と続く(表3)。なお、活性化している市町村(一人当たり所得が高く、人口が減少していない)では、産直と観光みやげ店での販売が多く、都市等との交流が多いことを示している。一方、非活性市町村(一人当たり所得が低く、人口減少が著しい)はアンテナショップの比率が全国平均の2倍以上であり、販売条件の悪さを克服する努力が図られているといえる(図1)。 (5)加工販売に伴う現在の問題点 販売方法が38.3%で最も多く、次いで収益性、労働力、加工技術となった。加工技術は農協や農業改良普及センター等の指導、各地域における伝統的な加工技術の継承、女性組織を中心とした加工技術の研鑚等が行われていることが反映していると考えられる。しかし、非活性市町村は労働力と加工技術で活性化市町村の2倍以上の問題をもっている。 (6)加工品の生産見通し 全国では、現状維持が51.7%、増加が41.3%、減少が7.0%であり、増加傾向にあるといえる。一方、農業地域別にみても東北で増加が現状維持を上回り、また、近畿では減少が2.1%と極めて少ない。これらのことから、すでに過当競争に突入している村おこし商品は、さらに競争が激化すると予測され、既存の製品の低コスト化や新規商品開発、販売方法の確立等を図らなければ、加工・販売施設整備への投資資本の回収すら困難になる組織が発生すると考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | 国・県・市町村等が中山間地域の農業振興に対して具体的対策を講じる際の参考資料となる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | うめ 加工 きゅうり こんにゃく 出荷調整 大豆 中山間地域 低コスト ふき ゆず |