中山間地域の水田用水不足と冷水害状況およびその対策

タイトル 中山間地域の水田用水不足と冷水害状況およびその対策
担当機関 農業研究センター
研究期間 1996~1996
研究担当者
発行年度 1996
要約 用水不足は調査面積の43%で発生している。その原因は水源に関わるものが42%を占めている。また、対策としては水源・水路施設の新設・更新が60%、水管理方法に関するものが29%であった。冷水害対策は52%の市町村で実施されており、その方法としては深水管理と掛け流し防止が多いが、地域によって方法に特色がある。
背景・ねらい 中山間地域では用水不足が恒常化しつつある。その原因には水源地域の保水能力の低下や水路の老朽化による漏水、共同管理の困難化など幾多の問題点があげられている。そこで、これら問題点と市町村の考える対策を把握するため、全国の中山間市町村へのアンケート(平成6年12月実施、回収市町村数:1,250、回収率:75%)を実施し、水田用水充足状況、用水不足原因、不足対策、不足対策の実施主体、受益者共同管理の水源・水路の問題点、冷水害対策について調査した。
成果の内容・特徴 (1)用水不足状況
「不足しておらず自由取水が可能」が面積比率で57%、「毎年のように不足する」が3.0%、「2年に1回程度不足」が13.8%、「不足していないが水利権や水利慣行等により取水期間や水量に制限がある」が23.0%であった。
(2)用水不足原因
「水源水量が少ない」と「集水域が少ない」ことが原因の1、2番目であり、両者を併せると水源問題が42%を占めている(表1)。次いで用水路の老朽化、水源施設の老朽化であり、これら水源・水路系のハード的な問題が72%を占めている。また、ソフト的問題としは「水田水管理の不徹底」が問題となっており、過疎化等の社会的要因と基盤整備の遅れが原因している。
(3)用水不足対策
「新規水源の確保」、「水源施設の更新」、「用水路の更新」がほぼ同率で不足対策の1~3番目となっている。いずれもハード事業の実施を必要とするが、平地と比較して施設当たりの受益面積が少ないことや受益者の耕作面積そのものも少なく、農業収入のみによる費用負担が困難であることから、耕作の継続による環境保全機能等の維持といった観点からの公的支援も検討する必要がある。4番目は「水管理の適正化」であり、基盤整備による管理できる水田の造成や自動給水器の設置、公的助成による地域用水管理人の設置等も考えられる。5番目は「反復利用率の向上」であるが、これを実施するためには基盤整備が必要である。用水不足対策の最終手段としては「水田の畑利用と林地化等」の水田外利用があるが、一歩間違えば耕作放棄地の拡大につながることから、これを可能とするためには適地判定等によるゾーニングとこれら農林地管理に対する公的な助成も検討する必要がある。
(4)不足対策の実施主体
実施主体の1番目は「土地改良区等」であり、次いで「受益者共同」、「市町村」となり、県や国を実施主体と考えている比率は北海道を除いて少ない。これは団地規模が事業採択基準を満たさないためと考えられ、小規模基盤整備事業を実施している市町村の78%が団地規模が補助事業の採択基準を満たさないことを理由にあげている。
(5)共用管理水源・水路の問題点
老朽化対策が79%で最も多い。次いで共用管理の困難化であり、集落の連帯感の希薄化や過疎化、高齢化等が原因であり、多くの集落ですでに管理不能に陥っている。また、水田の賃貸借等の流動化に伴う維持管理のあり方が問題となっている。水源・水路管理を借地者のみに課すとその労働負担が耕作規模の拡大を阻害する。このことから、受益規模が限られた個別施設の管理に対する公的支援のあり方も検討することが重要である。
(6)冷水害対策
冷水害対策は調査回答市町村の52%で実施されている。その方法は深水管理が最も多く、特に北海道と東北では75%を越えている。深水管理の水深は全国平均では18cmであるが、地域別ではその最大は北海道で45cm、北陸と九州で40cm、その他の地域では30cmであった。これ以外の方法について多い順番にあげると、かけ流しの防止、漏水対策、温水ため池となるが、地域によってその対策が大きく異なっている。また、これら対策を講じるためには畦畔補強や圃場整備等が行われていなければ完全に実施することが難しいと思われる。
成果の活用面・留意点 国・県等が中山間地域の用水対策を具体的に講じる場合の参考資料となる。
図表1 224170-1.gif
カテゴリ 水害対策 水田 中山間地域 水管理

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