リボゾームDNA領域の変異に基づくTetranychus属ハダニ類4種の同定法

タイトル リボゾームDNA領域の変異に基づくTetranychus属ハダニ類4種の同定法
担当機関 農業研究センター
研究期間 1998~2000
研究担当者
発行年度 2000
要約 PCR法により増幅したリボゾームDNAのスペーサー領域を制限酵素DraⅠおよびAfaⅠで切断し、その断片長を比較することにより、形態観察による同定が困難なTetranychus属ハダニ類4種の雌成虫が判別できる。
背景・ねらい Tetranychus属のハダニ類は豆類などの畑作物ならびに野菜、花卉、果樹などの共通の重要害虫である。特に、カンザワハダニは種々の薬剤に対する抵抗性の発達が知られ、その分布は世界的には東アジアに限定されているため、重要な検疫対象害虫にあげられている。しかし、カンザワハダニの雌成虫は近縁な他種の雌成虫との形態的識別が困難なため、Tetranychus属の複数の種が発生する圃場では発生消長や動態の詳細な解析が難しく、輸出の障壁になる例もみられる。そこで、本研究では遺伝子マーカーによるTetranychus属雌成虫の同定法を確立した。
成果の内容・特徴
  1. 1.5mlのサンプルチューブに個体別に入れた雌成虫を磨砕液20ml(10mM Tris-HCl, 100mM EDTA, 0.5% Igepal CA-630, 10mM NaCl, 1mg/ml Proteinase K)中でガラス棒により磨砕し、それを65℃で15分間、続いて95℃で10分間処理した後、0.1×TE 380mlを加えた粗抽出液をPCR法に用いる(1ml/反応)。この方法で多数の個体に対して効率的にDNA解析を行うことができる。
  2. カンザワハダニ、ナミハダニ、ナミハダニモドキおよびアシノワハダニの4種ではITS1、5.8SおよびITS2を含むリボゾームDNAスペーサー領域(約1,200bp)の塩基配列の解析結果において、制限酵素DraⅠおよびAfaⅠの認識部位に差異がある(図1)。
  3. DraⅠ処理後のDNA断片は3.5%のアガロースゲルを用いた電気泳動法により,いずれの種においても2本のバンドとして検出されるが、サイズが大きいバンドはカンザワハダニとナミハダニが最も長く(約800bp)、次いでアシノワハダニ(約760bp)、ナミハダニモドキ(約700bp)の順である(図2A)。したがって、これによりアシノワハダニとナミハダニモドキが他の2種から識別できる。AfaⅠ処理後では、4種に共通して310~360bpの断片が複合したものと約 500bpの2本のバンドが検出されるが、ナミハダニではこれらに加えて163および185bpの断片が複合した小さいバンドが検出されることにより他の3種と容易に区別できる(図2B)。
  4. 各地の野菜・果樹等から採集され、雄成虫の形態から同定されたカンザワハダニ10個体群(茨城、静岡、奈良(5)、和歌山(2)、山口)、ナミハダニ7個体群(奈良、和歌山(3)、高知(3))、ナミハダニモドキ3個体群(茨城、長野、奈良)およびアシノワハダニ3個体群(和歌山(2)、高知)において、この分離パターンによる種の判別が可能であることを確認した。
成果の活用面・留意点 野菜・果樹等に発生しているTetranychus属ハダニ類が雌成虫で判別できるため、個体群動態の解析や植物検疫に広く活用できる。
図表1 224350-1.gif
図表2 224350-2.gif
カテゴリ 病害虫 害虫 植物検疫 抵抗性 薬剤 輸出

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