タイトル |
合成開口レーダ干渉法で求めた水蒸気水平分布 |
担当機関 |
農業研究センター |
研究期間 |
1997~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
基礎的な水蒸気解析のために、合成開口レーダ差分干渉法と気象データを用いて、積算された大気中水蒸気の水平分布を求める手法を開発した。
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背景・ねらい |
水蒸気(湿度)の水平分布は、これまで疎な観測点での観測値(湿度計や高層気象観測、GPS観測など)であった。ところが近年衛星リモートセンシングの一手法である、合成開口レーダ差分干渉法(差分干渉SAR)で"衛星の方向に積算された水蒸気の水平分布"を求める手法が開発された。この手法は衛星軌道が正確なヨーロッパの衛星を使ったものであったため、軌道情報の精度が高くない日本の衛星ふよう一号へ適用する場合、詳細な気象学的検討を伴った軌道推定が必要であった。そこで本研究では水蒸気水平分布を求めるために、気象データを用いた差分干渉SAR解析を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 差分干渉SARで得られる水蒸気水平分布は、2観測日の衛星データを干渉させることから、2観測日の差となる。また水蒸気分布はレーダ観測に用いるマイクロ波の電波伝搬遅延の分布図(大気遅延分布)に現れるため、衛星方向への大気中の水蒸気の積分値が得られる。したがって夏季などの湿って暖かい時期の観測と秋などの乾燥して寒い時期の観測から大気遅延分布図を作成すると、主に湿った時期の水蒸気分布の特徴を得ることができる。
- 人工衛星の回帰間隔は44日で、1回の観測は瞬時に終わるため、水蒸気分布の時間変動は捉えられない。
- .ふよう一号の精密な衛星軌道推定手法を明らかにした。これにより2観測日の衛星間距離が約10cmの高い精度で決定できる。
- 正確な衛星軌道を用いて求めた大気遅延分布図を高層気象データから求めた大気遅延と比較した結果、本手法は大気遅延の高度依存性をよく説明することができる(図1,図2)。また大気遅延の大部分は水蒸気による湿潤大気遅延である。従って図1が水蒸気分布といえ、1周期が遅延量11.8cm、可降水量17.6mmの水蒸気量に相当する。
- 風による特異的な水蒸気分布を気象数値モデルを用いた数値実験により再現することができる(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 水蒸気分布は気象数値モデルの精度検証に役立てられる。
- 本成果で得られた水蒸気の基礎的知識は、病害解析などの農業応用の基盤となる。
- 衛星の方向は天頂から約35度傾いた方向である.
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
乾燥
GPS
リモートセンシング
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