塩ストレスにおける液胞膜ピロホスファターゼの役割

タイトル 塩ストレスにおける液胞膜ピロホスファターゼの役割
担当機関 食品総合研究所
研究期間 1994~1994
研究担当者
発行年度 1994
要約  液胞膜ピロホスファターゼ(PPase)は塩ストレスで阻害を受けやすい酵素であった。イネには少なくとも4つの液胞膜PPaseのアイソマーが存在し、塩ストレスで阻害を受けやすい品種と受けにくい品種とではアイソマーの遺伝子発現が異なっていた。
背景・ねらい  世界の人口は現在約57億人であるが、35年後の西暦2030年には現在の1.5倍の約85億人になると予測されている。しかし、地球上に存在する優良農地は限られており、今後、作物収量を増やすためには、環境ストレスに抵抗性のある植物を育成し、砂漠や塩類集積土壌などの未耕地土壌も利用していく必要がある。本研究では、植物の塩ストレスに対する耐性機構を解明することを目的として、液胞膜を介したイオン輸送に関与する液胞膜ピロホスファターゼ(PPase)の特性ならびに遺伝子を解析した。
成果の内容・特徴
  1. イネの液胞膜PPaseによるプロトン輸送は、塩ストレスによって阻害を受けた。また、阻害の程度は品種によって差異があった(図1)。
  2. 同じ液胞膜に存在するH+-ATPaseよりも、液胞膜PPaseは塩ストレスによる阻害が大きく、液胞膜PPaseは塩ストレス感受性の高い酵素であることが示された(図1)。
  3. イネcDNAライブラリーより得られた2つのクローン(OSVP1、OSVP2)の全塩基配列を決定した。OSVP1とOSVP2とは核酸レベルでお互いに75%の相同性を持っていたが、5’側および3’側の非翻訳領域の比較ではどちらの場合も45%と相同性は低かった。
  4. OSVP1は771アミノ酸から、OSVP2は767アミノ酸からなることが推定され(図2)、アミノ酸レベルでお互いに対して88%、シロイヌナズナのPPase(AVP)に対してはそれぞれ87%、85%の相同性を有していた。
  5. 液胞膜PPaseにも他のプロトンポンプのように複数のアイソマーがあり、イネにはOSVP1およびOSVP2を含めて少なくとも4つのアイソマーが存在すると思われた。
  6. 塩ストレスに対する感受性の異なる日本晴とボロとではアイソマーの遺伝子発現パターンに差異があった(図3)。
成果の活用面・留意点  細胞内の恒常性を保つ上で重要な働きをしているプロトンポンプの中でも、液胞膜PPaseは強く塩ストレスによる影響を受けた。このことから、耐塩性植物を作出する一つの手段として、PPaseの機能を強化してやる方法が考えられる。今回、耐塩性の異なるイネ品種において液胞膜PPaseの遺伝子発現が異なっていたことから、この発現機構を詳細に検討するとともに、アイソマーの生理的機能も併せて解析していく必要がある。
図表1 224414-1.gif
図表2 224414-2.gif
図表3 224414-3.gif
カテゴリ 抵抗性 品種 輸送

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