タイトル |
リボゾーム工学を応用して、微生物の物質生産性を飛躍的に向上! |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
稲岡隆史
越智幸三
岡本晋
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発行年度 |
2008 |
要約 |
8種の薬剤に対する耐性変異を逐次的に導入する事により、微生物の抗生物質生産能を劇的に上昇させる事ができる。本技術は簡便さに特徴がある。
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キーワード |
リボゾーム工学、薬剤耐性変異、8段育種、放線菌
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背景・ねらい |
微生物の育種は時間と労力を要するのが普通であるが、本技術はより合理的な育種を可能にしたものである。「リボゾーム工学」(文献1)による育種法は既に報告しているが、今回はリボゾーム工学の原理の更なる有用性(文献2)を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- リボゾーム攻撃性の薬剤7種(ストレプトマイシン、ジェンタミシン、パロモマイシン、ジェネティシン、フシジン酸、チオストレプトン、リンコマイシン)およびRNAポリメラーゼ攻撃性の薬剤リファンピシンに対する耐性変異を逐次的に導入することにより、放線菌Streptomyces coelicolorの青色抗生物質アクチノロージンの生産力を野生株の180倍に高める事ができる(図1A, B, C)。
- 生産力アップの要因は制御遺伝子(actII-ORF4)の発現が転写レベルで促進された事による(図1D)。
- 8段育種された菌株は形態に大きな変化が生じている(図2)。
- 8段育種菌では生育後期における蛋白質合成能(図3B)と生育初期における細胞内ppGppレベル(図3C)が著しく上昇しており、この2点が抗生物質生産能力アップの大きな要因となっている。
- 細胞内ppGppレベルの上昇はチオストレプトン耐性変異(tsp)導入によって付与されている。しかし、このtsp変異の実体(変異遺伝子)は不明のままである。
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成果の活用面・留意点 |
- 本技術は自然界から分離した遺伝情報の全くない菌株にも即適用しうること、すなわち利便性に最大の特徴がある。
- 薬剤耐性変異は“セレクティブ”な形質なので、変異株取得が容易である。
- 通常の育種に比べ、短期日ですむ(8段育種は8ヶ月で完了した)。
- 作出された育種株は遺伝的に安定で、10回以上の植え継ぎにおいてもその形質が変化する事はない。
- 遺伝子工学操作を行わないいわゆるクラシック変異処理に属するため、食品微生物等に使用しても「遺伝子組み換え生物」には該当せず、関連法の規制を受けることがない。
- 8段育種株は、形態が変化し、かつ生育が遅くなった(図3A)。菌株によって形態や生育に影響が現れる可能性がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育種
薬剤
薬剤耐性
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