走査型プローブ顕微鏡による染色体の物理地図構築技術

タイトル 走査型プローブ顕微鏡による染色体の物理地図構築技術
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2003~2008
研究担当者 高橋宏和
杉山滋
大谷敏郎
塚本和己
発行年度 2008
要約  染色体上の任意のナノサイズの領域を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の探針を利用して切断回収した後、得られた塩基配列情報を利用して、その領域への連鎖マーカーの作成、物理地図の構築行なうことができる。染色体試料とBACライブラリーのみから、解析対象とする局所的領域の物理地図の速やかな構築が可能であり、農林水産業上の重要形質遺伝子の同定・単離の加速化が期待できる。
キーワード ゲノム解析、物理地図、走査型プローブ顕微鏡
背景・ねらい
 現在、いくつかの主要な生物種のゲノム解析が終了または進行中であるが、農業生物においては、ゲノム情報がほとんど存在しない種も未だ多数残されている。本技術では走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いたナノテクノロジーをゲノム解析に応用し、ゲノム情報に乏しい農林水産生物であっても、狙った局所的領域に物理地図や連鎖地図の構築を可能とする。
成果の内容・特徴
  1. 染色体上の標的とするナノサイズの領域を、SPMの探針により、切断回収する技術である。探針に比較的に強い力(〃N)を印加しつつ、対象位置を一回だけスキャンし、その後、上方に引き上げることにより、染色体のナノサイズ断片を回収する(図1)。染色体断片が探針上に回収されているかどうかについては、回収操作後に、探針をDNAに結合性の蛍光色素(インターカレータ、YOY0-1)によって染色して確認する(図2)。本手法による染色体切断回収の成功率は90-95%程度である。
  2. 切断回収した染色体のナノ断片を鋳型として、改良した DOP(Degeneratedoligo-nuCleotideprimed)-PCRにより、効率は低いながら、断片由来の塩基配列を得られる(図3)。
  3. 切断断片の塩基配列情報(100い300bp程度)を利用して、切断部位に相当するBAC(Bacterialartificialchromosome)クローンをゲノムBACライブラリーからスクリーニングすれば、最初に得られたBACクローンの末端配列情報から、さらに隣接するクローンを順次得て、最終的に数100kbの物理地図を構築することが可能である(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 本技術により得られる塩基配列は、SPMにより染色体の標的とする領域から得たものであり、ゲノム上の物理位置があらかじめ判明している配列である。したがって、得られる塩基配列が、わずかであっても、ゲノムライブラリを併用することにより、隣接領域のクローンを容易にスクリーニングでき、既存のゲノム情報が存在しなくとも、数100Kb程度のBAC物理地図の構築が可能である。
  2. 現時点では、SPMで切断した断片からのDNA増幅効率が低いという問題が残っているため、DNA増幅手法の改良を進めている段階である。
図表1 224676-1.png
図表2 224676-2.png
図表3 224676-3.png
図表4 224676-4.png
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