粗飼料の反芻家畜消化管通過速度マーカーとしての希土類元素の利用

タイトル 粗飼料の反芻家畜消化管通過速度マーカーとしての希土類元素の利用
担当機関 東北農業試験場
研究期間 1995~1995
研究担当者
発行年度 1995
要約 粗飼料片を浸漬法で標識した希土類元素は、反芻胃及び第四胃の固相中にほぼ100%存在する。よって、粗飼料を希土類元素を用いて浸漬法で標識すれば、固相の消化管通過速度マーカーとして利用できる。
背景・ねらい 消化管通過速度の測定は、粗飼料の消化プロセスや自由摂取量の解明に有力な情報となる。従来、消化管通過速度のマーカーとしては、プラスティック粒子、酸化クロム、フクシンによる染色飼料片等が用いられてきたが、いずれの物質も通過速度のマーカーとしては一長一短がある。希土類元素は、植物の細胞壁に親和性が高いことから消化管通過速度マーカーとしての利用が試みられているが、消化管内における挙動及び標識方法についての知見は乏しい。そこで、粗飼料に標識した希土類元素の反芻家畜消化管における挙動及び希土類元素を用いた標識方法が通過速度に及ぼす影響を明らかにし、希土類元素がマーカーとして利用可能であるかを検討した。
成果の内容・特徴
    希土類元素は浸漬法で乾草に標識すれば、反芻家畜消化管における固相の通過速度マーカーとして利用できる。
  1. チモシー乾草をディスプロシウム水溶液(0.5%(w/w))に浸漬標識しめん羊に給与した場合、ディスプロシウムは6時間後の反芻胃液相部には溶出が認められず、24時間後でも98%が固相に存在する。6、24時間後の第四胃においては、100%固相に存在する。一方、イッテルビウムを浸漬標識した大豆粕では、6時間後に反芻胃、第四胃の固相にほぼ100%存在するが、24時間後には反芻胃で8%、第四胃で3%が液相に溶出する(表1)。
  2. イッテルビウムをスプレイ法で乾草に標識し測定した反芻胃通過速度定数はディスプロシウムを浸漬法で標識した場合と差が認められなかった。しかし、下部消化管通過速度及び全消化管滞留時間はスプレイ法が短く、スプレイ法では下部消化管で希土類元素が標識飼料から解離した可能性がある(表2)。
  3. ディスプロシウムを浸漬法で標識した乾草とその中性デタージェント繊維(NDF)にイッテルビウムで標識した場合、反芻胃通過速度は、NDFが乾草に比べ有意に遅い(表3)。乾草に浸漬標識した固相の反芻胃通過速度は、液相の反芻胃通過速度と有意な相関が認められ(図1)、内容物は液相部と固相部が混和して反芻胃から流出することから考えると、乾草への標識はNDFへの標識よりも摂取飼料の消化管での挙動を示すのに適当である。
成果の活用面・留意点
  1. 反芻家畜の消化メカニズムの解明に有効な手法として活用できる。
  2. 標識飼料及び家畜糞中の希土類元素濃度の分析は、湿式灰化しICP発光分析法による。
  3. 希土類元素は化学的性質が酷似しているため、イッテルビウムとディスプロシウムの元素間差は無視できる。
図表1 224751-1.jpg
図表2 224751-2.jpg
図表3 224751-3.jpg
図表4 224751-4.jpg
カテゴリ 大豆粕

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