タイトル |
傾斜放牧草地における放牧圧の分布と地形区分 |
担当機関 |
家畜飼養研究室 |
研究期間 |
1992~1993 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
傾斜放牧草地の合理的な管理技術を確立するため、放牧圧と草生産の分布を地形条件を基軸に解析し、それに基づく地形区分を行った。その結果、凹型地形を持つ地点以外は、13度以下・13~16度・16度以上の3つに傾斜を区分して管理することが重要と考えられた。
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背景・ねらい |
放牧草地の多くは複雑な地形から成る山地傾斜地に立地するが、このような条件下にある草地の管理は、地形や、それに伴って変化する家畜の行動を考慮して行われる必要がある。しかし、それらに関する問題については未整理な部分も多く、体系的に十分理解されているわけではない。そこで、地形要因を基軸に問題を整理・解析することにより、地形条件に基づいた合理的な草地管理技術を確立するための基礎資料を得る。
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成果の内容・特徴 |
調査の対象は浅間山南麓の標高1,200mに位置する面積 2.3haの放牧草地である。ここでは黒毛和種繁殖牛(子付き)13頭が隣接牧区との間で1週間毎に交互放牧されている。この草地を10m×10mの格子に分画し、各マス毎に平均傾斜角、牧草の生産性、および裸地率、排糞の落下率などを調査した。
- 調査地点の傾斜角は23.2度~ 8.5度までの間に分布した(図1)。なかでも傾斜の急な地点では家畜の行動が規制され、ほぼ等高線に沿う形で牛道が著しく発達した(図2)。そのため、草地の裸地率は傾斜の増加に伴って顕著に増加した(図3)。
- 糞の落下率は裸地率の分布とは対照的で、放牧家畜の休息場として利用頻度の高い傾斜の緩やかな地点で高まる傾向を示し(図4)、このような偏りは二次的に草の採食利用率や土壌養分の分布(成果情報第 10号 p.51-52)を不均一なものにした。
- イネ科牧草の生産量は傾斜が比較的に穏やかな地点で高い傾向を示す(図5)が、これには上記のような地形に伴う放牧圧の不均一性が強く影響しているものと考えられた。
- 上記の各要因に折れ線モデル(大塚 1978)を当てはめたところ、裸地率の分布では傾斜角13度と17度付近に、糞の落下率およびイネ科牧草の生産性では16度付近にそれぞれ折曲点が存在することが明らかになった。すなわち、牛が自由に行動できる13度以下、やや傾斜の規制を受ける13度~16度、非常に強く受ける16度以上の3つに傾斜を区分して管理することが重要と考えられた。
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成果の活用面・留意点 |
- 傾斜放牧草地の地形区分に基づく合理的な草地管理の指標として利用できる。
- 谷底などに位置する強い凹型地形を示す地点では、上記のような関係が認められない場合がある。これには、降雨時の流水が強く関係している可能性があり、別途検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
管理技術
傾斜地
繁殖性改善
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