タイトル |
フローサイトメーターによる倍数性育種 |
担当機関 |
山梨県酪農試験場 |
研究期間 |
1986~1996 |
研究担当者 |
山田敏彦
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発行年度 |
1996 |
要約 |
葉を細片した試料にDAPI染色液を加え,フローサイトメーターで相対DNA量を測定して,DNAヒストグラムを作成する手法より,迅速,簡便に植物体の倍数性の確認ができる。本手法により,1日100点以上の個体の倍数性の確認が可能である。
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背景・ねらい |
植物は染色体数をコルヒチン等の化学処理により倍加することができ,倍加にともない形態が大きくなる。茎葉を利用する牧草では倍数性育種が以前から行われ,ライグラス類やアカクローバ等で多収品種がこれまでに育成されている。化学処理した個体における倍数性の確認には,これまでは,細胞の染色体数調査や花粉の大きさ等の形態観察が行われてきた。しかし,染色体数の調査には熟練と時間を要し,また,形態観察では不正確という問題があった。最近,フローサイトメーターによる細胞核の相対DNAを迅速に測定できる手法が開発されたので,ペレニアルライグラスへの利用を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- ペレニアルライグラスの葉身1gを1mlの核解離用液(ドイツ,パーテック社)に浸して,かみそりで細片した。細片された葉を含む液をナイロンメッシュ(50μm)で濾過して,DAPI(4,6-ジアミジン-2-フェニールインドール)を含むDNA染色液(ドイツ,パーテック社)を5倍量加えて,フローサイトメーター(ドイツ,パーテック社,CCA)を用いて各細胞核の相対DNA量を測定して,相対DNA量ヒストグラムを作成した。
- フローサイトメーターで二倍体品種(キヨサト)及び四倍体品種(ヤツボク)について30個体を測定し,すべて同じパターンを示した(図1)。四倍体品種のDNA量のピークは二倍体の2倍の位置にあった。両者の混合液はそれぞれ両方のヒストグラムのピークを示した。
- 催芽種子をコルヒチンで処理して胚軸の肥厚の個体を育成した。これらの個体についてフローサイトメーターを用いて倍数性の確認を行ったところ,中には二倍体やキメラ個体(二倍体と四倍体の混在)(図2),体細胞分裂異常個体(図3)などと考えられる個体が存在し,四倍体の相対DNA量のピークのみを示した個体を選抜した。
- 本分析法により,1日に100点以上の個体における倍数性の確認が可能であった。
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成果の活用面・留意点 |
- 倍数性育種の事業にルーチンワークとして利用できる。
- セルの洗浄が不十分であると相対DNA量のピーク位置が違うことがある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育種
品種
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