タイトル |
エンドファイト感染牧草が耐虫性を示す害虫 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1996~1998 |
研究担当者 |
吉松慎一
有村一弘
島貫忠幸
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発行年度 |
1998 |
要約 |
エンドファイト感染トールフェスク種子は貯穀害虫ノコギリヒラタムシの増殖を顕著に抑制した。エンドファイト感染、非感染ペレニアルライグラスを食葉性の鱗翅目幼虫に同時に与えたところ、スゲドクガでは感染葉片は全く食べず、非感染葉片のみを食べた。
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キーワード |
エンドファイト、ノコギリヒラタムシ、スゲドクガ
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背景・ねらい |
エンドファイト(植物体内に共生する微生物の総称;ここではNeotyphodium属の糸状菌を対象とした)感染植物の耐虫性が近年脚光を浴びてきたが、その有効性と耐虫性の機構はあまり判っていない。特に、我が国においてはその研究は始まったばかりであるので、エンドファイト感染牧草の耐虫性を、種子を食べる貯穀害虫と葉を食べる鱗翅目幼虫を用いて明らかにした。
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成果の内容・特徴 |
- エンドファイト感染トールフェスク種子3品種、非感染トールフェスク種子3品種を餌として、種子を食う貯穀害虫、ノコギリヒラタムシを飼育し、その増殖個体数を比較した。飼育開始10週後、生存成虫数とともに死亡成虫数もカウントしたところ、感染3品種では全ての容器において新成虫の出現はなかったことが確認され、生存成虫数はいづれの感染品種においても飼育開始時の10個体より少なかった。また、感染品種では肉眼では幼虫や蛹は全く認められなかった。一方、非感染3品種では10週後本種はよく増殖した(表1)。同じ実験を貯穀害虫ヒラタコクヌストモドキを使って行った結果は昨年度の成果情報及び学会誌で公表したが、参考のため表1に示した。ヒラタコクヌストモドキでは感染3品種では非感染3品種に比べて増殖数が有意に少なかった(P<0.001)。
- ペレニアルライグラスの同一株から作出したエンドファイト感染、非感染のクローンの葉片を同時に蛾のふ化幼虫に与えた。試験した17種(メイガ科5種、ドクガ科1種、ヒトリガ科3種、ヤガ科8種)の幼虫のうち、スゲドクガ(図1)ではエンドファイトの顕著な効果が確認された。すなわち、スゲドクガのふ化幼虫1個体をエンドファイト感染及び非感染ペレニアルライグラス葉片を並べたシャーレに放したところ、試験した16個のシャーレ全てで感染葉は全く食べられず、非感染葉のみが食べられた。本種ではさらに2齢幼虫でも19個のシャーレを用い同じ試験を行ったが、ふ化幼虫同様、全てのシャーレで感染葉は全く食べられずに非感染葉のみが食べられた(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 耐虫性トールフェスク及びペレニアルライグラスを開発する上で上記の昆虫を生物検定に利用することが可能である。耐虫性の機構については今後解明する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
害虫
品種
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