タイトル |
イネ科急傾斜草地の推定被食TDN量の経年変化 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1998~1998 |
研究担当者 |
櫛引史郎(現東北農試)
寺田隆慶
梅村和弘
木戸恭子
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発行年度 |
1998 |
要約 |
造成後におけるイネ科傾斜草地の家畜生産(推定被食TDN量)は,利用3年目に最大となり,利用3年目(3.8t/ha)を100とすると10,15,20および25年目ではそれぞれ約72,54,42および48である。
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背景・ねらい |
傾斜地に造成された草地は植生,家畜生産力や環境保全等の機能を維持しながら長年月にわたって利用されることが望ましい。最近,傾斜草地の裸地率やイネ科牧草生産量と平均傾斜角度との関係が明らかにされ,また造成後の植生変化は傾斜に起因する放牧圧に基づく可能性が指摘されている。このような植生変化に加えて造成後の傾斜草地の家畜生産力の経年変化を明らかにしておくことは,草地・放牧管理や低投入持続型生産等の視点から重要である。
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成果の内容・特徴 |
浅間山南麓の南斜面(面積約10ha,標高1,150~1,260m,傾斜度5~40゜,'69年造成(オ-チャ-ドグラス(OG),ペレニアルライグラス等6草種混播,'85年にト-ルフェスクとチモシ-を一部に追播)に,毎年,成雌牛16~30頭(子牛付き黒毛和種成雌牛主体)を4月下旬から11月上旬まで昼夜放牧(輪換放牧主体)した。施肥量(kg/ha)はN;100(120),K2O;30(171),MgO;60(0)(括弧内は'82年まで)。 放牧期間の家畜生産(増体の増減,妊娠や泌乳など)は14日を1期間として,日本飼養標準(肉用牛,'95)のそれぞれの該当表・式にあてはめTDN摂取量に換算し,家畜生産に見合うTDNはすべて被食草として補われたと仮定した(推定被食TDN,以下被食TDN)。計算に当たって,泌乳に必要なTDNは母牛が草地から採食するとし,別飼哺乳子牛は生後12週齢から体重の1%の別飼飼料を採食するとして,哺乳子牛以外に対する補給飼料はTDNに換算してそれぞれ期ごとに補正した。
- 植生の変化
s 草地の被度は当初優占であったOGが,利用開始から7,8年目の'78,'79年にかけてに最大となり,以後逓減した。これに対してケンタキ-ブル-グラス(KB)は利用開始後から年々被度を増し,利用開始14年目('83年)にはOGと交差し,以後KB優占の草地となり,安定した(図1;井出ら 1993)。
- 被食TDNの季節変化
夏期後に草地生産の十分な回復が認められず,年度内の期別の被食TDN量(kg/14日/頭)は擬似の二峰様を示した(図2)。
- 被食TDN量の経年変化
(1)放牧期間の1頭当りの被食TDN量 単年の放牧期間の1頭当り被食TDN量(kg/年/頭)は,放牧総頭数と反比例の傾向が強くうかがわれた。年次変化としてはOGとKBの被度が交差する2,3年前(利用開始12~13年目('81~'82年)から450~500kg内外の安定した水準となった(図3)。 (2)単位面積からの被食TDN量の経年変化 単位面積からの被食TDN量(kg/ha/年)はOGの合計被度曲線(図1)と近似した推移をたどった。利用3年目の'73年に最大値3.8tを示した後は,逓減した。利用開始10年目(1980年)から16年目('86年)にかけての減少が急激であったが,利用開始後16年目('86年)頃からは約2tの水準で安定した。最大値を示した利用3年目('73年)を100とすると,10,15,20および25年目ではそれぞれ約72,54,42および48であった(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- イネ科急傾斜草地の草地造成後における可食草量・家畜生産の経年変化傾向の指標の一つとして利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
傾斜地
施肥
肉牛
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