サイレ-ジの好気的変敗防止を目的とした組換えキラー酵母の効果

タイトル サイレ-ジの好気的変敗防止を目的とした組換えキラー酵母の効果
担当機関 農業生物資源研究所
研究期間 1998~1999
研究担当者 大桃定洋(畜試)
長谷部亮
田中治(草地試)
飯村穣(山梨大)
北本宏子
発行年度 1999
要約 サイレージの好気的変敗防止を目的として作出した組換えキラー酵母は、サイレージ発酵過程において変敗の原因となる野生酵母の生育を阻止し、変敗を遅延させる。また、同酵母は非標的微生物の生育には影響を与えない。
背景・ねらい サイレージの好気的変敗は、好気条件下の野生酵母による乳酸の消費が第一の原因である。このため、野生酵母の生育を選択的に抑制するキラー酵母の利用を検討したが、キラー酵母自体が乳酸を消費した。そこで、遺伝子組換えにより乳酸に生育する能力を欠損したキラー酵母を作出した。このキラー酵母を用いて、サイレージモデル発酵系および実験室規模のサイレージ調製で、組換えキラー酵母、野生酵母、細菌の動態とサイレージの品質を解析し、組換えキラー酵母のサイレージ添加剤としての効果と安全性を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. キラー酵母Kluyveromyces lactis IFO1267株の糖新生系酵素(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)遺伝子1)を、部位特異的相同組換えで欠損させた株を作製した。この株は、キラー活性・糖を炭素源とした生育は親株と変わらず、乳酸で
    生育しない2)。
  2. 滅菌したトウモロコシを用いたサイレージモデル発酵系で、組換えキラー酵母は変敗に関与する検定酵母の生育を抑制し(図1)、サイレージのpH上昇や乳酸の減少を遅延させた。これは、サイレージ内で生産したキラータンパク質のキラー効果による3)。
  3. 生草トウモロコシを用いた実験室規模(50 g)のサイレージ調製では、添加したキラー酵母はサイレージ発酵初期に増殖後減少し、検出できなくなったが、発酵中および開封後のサイレージの野生酵母フロラを変化させた。その結果、変敗の原因となる乳酸資化性酵母の比増殖速度は開封後遅くなり(図2A)、サイレージの品質低下の指標となるpH上昇を遅延させた(図2B)3)。
  4. 組換えに用いた酵母は食品添加物としての安全性が確認されているだけでなく、異種タンパク質生産宿主およびゲノム解析株として広く用いられている。組換え形質は継代培養後安定で、接合による遺伝子伝搬性は低い。添加した組換えキラー酵母、野生酵母およびその他の微生物の動態から、組換えキラー酵母は乳酸資化性以外は親株と同等の生育を示し、目的の微生物群を選択的に抑制し、非標的微生物(乳酸菌・好気性細菌)に対する影響は観察されなかった。
成果の活用面・留意点
  1. キラー酵母を利用したサイレージの好気的変敗防止方法と新規キラー酵母の探索、および組換え酵母の野外利用の安全性評価法の開発に関する基礎的知見となる。
  2. 実用化には、さらなる組換え酵母の安全性評価と、材料草別のサイレージにおける添加効果の検討が必要である。
図表1 224983-1.jpg
図表2 224983-2.jpg
カテゴリ とうもろこし 評価法

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