タイトル |
難分解性有害化学物質の農耕地土壌中での還元的脱クロル化反応 |
担当機関 |
九州農業試験場 |
研究期間 |
1999~2002 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
PCBを投与し長期間湛水条件下に置いた畑土壌で,ヘキサクロルベンゼン(HCB)が脱クロル化される。この反応は嫌気性細菌による還元的脱クロル化によるものであり,水田土壌でも脱クロル化される可能性がある。
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背景・ねらい |
超難分解性有害化学物質であるPCB,クロルベンゼン等の高塩素置換芳香族有機化合物はほとんどの好気性微生物では分解できないため,土壌が汚染された場合には土壌を取り除く以外に方法がない。極度に汚染が進んだ汚泥に生息する嫌気性細菌の一部がこれらの化合物を脱クロル化できることが示唆されているが,農耕地土壌での検討例はない。ここでは農耕地土壌での有害化学物質の分解除去手法の開発を目的として,農耕地環境中の脱クロル化反応とこれに関与する嫌気性細菌について知見を集める。
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成果の内容・特徴 |
- PCB(500ppm)を投与後26ヶ月間湛水条件下に置いた畑土壌にHCBを投与し,さらに100日間放置したところ,2種類のテトラクロルベンゼン(TCB)の位置異性体(1,2,4,5 TCB, 1,2,3,4 TCB)がGCMSで同定されたことから,湛水条件下の畑土壌で脱クロル化反応が起きている(図1)。
- HCBを唯一の末端電子受容体とし,3種類の有機酸塩(ギ酸ナトリウム,酢酸ナトリウム,乳酸ナトリウム)を電子供与体として添加した無機塩培地を用いた1ヶ月間の嫌気的集積培養で,PCBを投与した畑土壌と投与していない水田土壌で同様な微生物分解が認められる(図2)。
- 両土壌中のメタン菌,硫酸還元菌の生育を抑えた区で分解活性の減少は少なく,胞子を形成しない菌を取り除いた区で活性が著しく減少したことから,胞子を形成しない菌がこの反応に主に関与している(表1)。
- PCBを投与した畑土壌由来の集積培養液は芳香族ブロモ誘導体や極性官能基を有する芳香族ハロゲン化合物を分解しないが,多様な芳香族有機塩素系化合物を唯一の電子受容体として利用できる可能性がある(表2)。
以上の結果から湛水条件下の畑土壌では脱クロル化反応が起こっており,水田土壌でも脱クロル化能を有している可能性がある。
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成果の活用面・留意点 |
- この結果は還元的脱クロル化に関与する嫌気性細菌の特性解明,分離に利用できる。
- 脱クロル化された化合物は好気性微生物により分解されやすくなることから,この結果は土壌を除去せず,分解菌の接種を要しない,PCB等の難分解性有害化学物質の分解除去技術(Biostimulation)開発のために利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
水田
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