タイトル |
埋設型ライシメーターを用いた黒ボク土畑からの浸透水採取法の開発 |
担当機関 |
農業研究センター |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
浸透水の硝酸態窒素濃度やその溶脱量を簡易にモニタリングするため,埋設型ライシメーターを用いた浸透水の採取法を開発した。本法は,圃場で作物を栽培しつつ,作土下に下降移動する浸透水を連続的に採取できる。
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背景・ねらい |
各種肥培管理技術や作付体系を地下水への窒素等肥料成分の負荷低減の面から評価するため,テンションキャピラリーライシメーター(TOMH-1型・2型,直径29.8cm,壁高15cm,写真1)やキャピラリーライシメーター(COMH-9型,縦30cm,横60cm,壁高60cm,図1)など埋設型ライシメーターの研究開発を進めている。これまでの黒ボク土畑での調査結果をもとに,これら埋設型ライシメーターの集水特性を解析し,硝酸態窒素等の溶脱量を簡易にモニタリングするための土壌浸透水採取法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 年間の総降水量1419mmに対し,吸引圧40cmH2O,63cmH2Oおよび100cmH2Oのテンションキャピラリーライシメーター(TOMH-2型)の浸透水採取量は,それぞれ168mm,389mmおよび695mmとなり,吸引圧が高くなるほど浸透水の採取量は多くなった。また,採水面と同一深さに埋設した水分計のマトリックポテンシャルより常に3~5cmH2O高い吸引圧で浸透水を連続採取する差圧制御型のテンションキャピラリーライシメーター(TOMH-1型)の浸透水採取量は646mmとなった(図2)。
- 黒ボク土畑の年間蒸発散量を700mm,表面流去を零と仮定すると,上記ライシメーターの集水効率は,それぞれ23%,54%,97%および90%となり,吸引圧100cmH2OのTOMH-2型と差圧制御型のTOMH-1型は,下降移動する浸透水の大部分を採取でき,硝酸態窒素等の溶脱量のモニタリングに利用できることが分かった。
- 圃場の不均質性などにより,キャピラリーライシメーター(COMH-9型)の年間浸透水採取量の最低値526mmと最高値790mmには1.5倍の開きはあるが,10基のキャピラリーライシメーターの平均浸透水採取量は約687mm(変動係数12.6%)で,壁面が地表に10cmでるよう埋設した従来型ライシメーターの浸透水採取量683mmとほぼ一致した。このCOMH-9型は,電源のない畑圃場における硝酸態窒素等の長期モニタリングに適している(表1)。
- 埋設時に下層土を圧密すると不透水層ができる可能性があるので,層位別に土壌を分けながら所定の深さの穴を掘り,埋設型ライシメーターを水平に設置し,作土層までできるだけ元の状態に埋め戻した後,軽く踏み固める。
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成果の活用面・留意点 |
- 圃場の畝幅と株間に合わせて埋設型ライシメーターの採水断面の大きさを変えるとともに,浸透水の採水面が地表面下1mとなるように埋設することが望ましい。
- 埋設型ライシメーターの集水効率は,壁高や埋設深の他,圃場の立地条件,土性,降水パターンなどにより変化する。また,水質が安定するまで1~2年必要なこともある。
- 地表面下1m以内に不透水層がある圃場や地下水位が地表面下約1.5m以内に上昇する圃場等に埋設型ライシメーターを設置すると,土壌水の浸透パターンが変化して,硝酸態窒素等の溶脱量を正確にモニタリングできないことがある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
肥培管理
モニタリング
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