タイトル |
ダイズのカドミウム吸収特性解明のための 113Cdトレーサー試験法 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2001~2002 |
研究担当者 |
織田久男
川崎 晃
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発行年度 |
2001 |
要約 |
圃場条件下でダイズによるカドミウムの吸収・移行特性を簡便,正確,かつ安全に調査する試験法として,カドミウムの安定同位体( 113Cd)トレーサー法を開発した。本法により,生育前期に吸収されたCdが生殖生長期にダイズ子実へ移行することを示した。
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背景・ねらい |
食品中の重金属元素濃度に関する国際的な基準値制定の動きを受けて,カドミウム(Cd)の主要作物子実中への移行・蓄積過程の解明が急務である。Cdの吸収は土壌,気象,栽培条件等の環境要因に大きく左右されるため,ポット試験のみでは不十分であり,現地における圃場実証試験が不可欠である。本研究では,現地の圃場条件下でダイズによるCdの吸収・蓄積過程を明らかにするため,Cdの安定同位体である 113Cdを直接,土壌中にトレーサーとして投与する簡便で精度の高い圃場試験法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 113Cdトレーサー法:トレーサー溶液(10 mg Cd
L -1)の10 mLずつを,株元から10 cm離れた円上に,等間隔で10箇所,10 cmの深さに投与した。株あたりの投与量は1 mg Cdである。(表1.圃場試験の概要) - ダイズ葉中のトレーサー濃度は,1回目投与区(本葉2~3葉期)では0.06 mg
kg -1まで達したが,2回目(開花期直前)以降は0.01 mg kg -1以下にまで急減した。また,1回目投与区の葉位別トレーサー濃度分布は,土壌由来のカドミウムの吸収パターンと一致した。(図1) - ダイズ子実中のトレーサー濃度は,開花期までに与えた区で高く,最大繁茂期以降に投与した区で激減した(図2)。このことから,生育初期に葉や茎に蓄積されたCdが生殖生長期に子実へ移行することが示唆された。
- 以上のように,安定同位体トレーサー法は,時期別や部位別にCdの吸収・移行を正確に追跡できる優れた圃場試験法である。また,放射性同位体トレーサーと異なり,安全上の規制も少なく,簡便に適用できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 土壌や大気中の微粒子に由来するCdと簡単に区別できるので,根からの吸収だけでなく,葉面から吸収されるCdの解析にも応用できる。
- 土壌に投与する場合は,生育時期別のダイズの根系発達を考慮して,トレーサー投与の深さを2点以上取った方がより正確なデータが得られる。
- 113Cdトレーサーの測定には四重極型ICP質量分析計が必要である。
- 本試験は秋田県農業試験場の試験圃場(表層腐植質黒ボク土)で大豆品種エンレイを用いて行った。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
栽培条件
大豆
品種
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