タイトル |
DNAからみたタンポポ属植物の雑種個体の識別と全国分布 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2001~2001 |
研究担当者 |
芝池博幸
大黒俊哉
井手 任
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発行年度 |
2001 |
要約 |
0DNA含量及びDNAの塩基配列などを指標にしたセイヨウタンポポと日本産タンポポの雑種識別法を確立し,両者の雑種として3タイプを識別した。また,環境省が行う「身近な生きもの調査」により採集された870個体のサンプルについて雑種識別を試み,セイヨウタンポポ及び3タイプの雑種個体の全国分布図を作成した。
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背景・ねらい |
侵入・帰化植物による遺伝的汚染が問題視されている。近年,セイヨウタンポポなどの帰化タンポポと日本産のタンポポが交雑可能であることが報告された。雑種個体は形態的に帰化タンポポに酷似していることから,形態形質以外の特徴によって両者を識別・分離し,それぞれの分布域を再確認する必要がある。そこで,分子生物学的手法を活用した簡便・迅速な雑種識別法を確立し,帰化タンポポと雑種個体の全国レベルの分布域を把握することを試みた。
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成果の内容・特徴 |
- 染色体数,核および葉緑体DNAの塩基配列,DNA含量の4つの観点からセイヨウタンポポと日本産タンポポを比較し,両者の識別に有効なマーカーを得た(図1)。これら4つのマーカーのうち,DNA含量の測定と葉緑体DNAマーカーを用いた解析により,母種及び3タイプの雑種個体(4倍体,3倍体,雄核単為生殖)を簡便・迅速に判定する手法を確立した。
- 環境省の「身近な生きもの調査(平成13年度)」により収集された形態的にセイヨウタンポポと見なされる870個体のサンプルについて,DNA含量の測定と葉緑体DNAマーカーを用いた解析を行った結果,全体の約85%にあたる740個体が雑種であることが判明した(図2)。その内訳は,4倍体雑種が54%の470個体,3倍体雑種が22%の191個体,雄核単為生殖雑種が9%の79個体であった。
- セイヨウタンポポと同じ核DNAを持つ雄核単為生殖雑種は,九州から北海道まで偏りなく分布し,セイヨウタンポポの分布域と重複していた(図3)。一方,4倍体雑種と3倍体雑種は北海道や北東北には分布しておらず,関東・東海および京阪神を中心とした地域において高い密度で分布していた(図3)。特に,3倍体雑種は関東以北にはほとんど分布せず,日本産タンポポと極めて近い分布域を持つことが示された。
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成果の活用面・留意点 |
- 母種の生育や分布を決定する要因(低温など)が,雑種個体の分布域の制限要因になっている可能性を示した。
- 環境省がおおむね5年ごとに行う「自然環境保全基礎調査」と連携することにより,雑種個体の分布域の経年変化を解析できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
DNAマーカー
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