土壌表層中ダイオキシン類の光分解反応実験装置の開発

タイトル 土壌表層中ダイオキシン類の光分解反応実験装置の開発
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2001~2002
研究担当者 遠藤正造
小原裕三
発行年度 2002
要約 土壌表層中のダイオキシン類の光分解反応を解析するため,400nm以下の紫外線領域を太陽光に近似させた光分解反応実験装置を試作した。この装置を用いて,粘土鉱物に添加した八塩素化ダイオキシン(OCDD)を光照射すると,OCDDの脱塩素化により毒性等量が増加するが,二酸化チタンを添加すると,光触媒作用によりOCDDが分解される。
背景・ねらい 除草剤PCPに含まれるダイオキシン類の主成分はOCDDであり,PCPを長期間使用した水田土壌には,現在でもOCDDが20,000pg/g 程度の高濃度で残留していることが報告されている。OCDDの毒性等価係数(TEF)は0.0001であるが,脱塩素化により毒性の高い同族体化合物が生成することが懸念されている。OCDDの主要な分解機構は土壌表面層での光分解であると考えられている。しかし,紫外線領域が太陽光と全く異なる波長特性を持つ従来の光照射装置及び溶液系の実験では,環境中における光分解反応を解析し予測することは不可能であった。このため,紫外線領域を太陽光に近似させたソーラーシミュレーターを用いた光分解反応実験装置を試作し,土壌表層におけるOCDDの光分解機構を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 一般に,化学物質の光分解には,400nmより短い紫外線領域が重要である。キセノンランプ(500W)を光源に,近紫外域近似補正用光学フィルターを用いて400nm以下の波長領域を太陽光に近似させた結果,波長特性は良く再現している(図1)。さらにインテグレーターレンズとコリメーターレンズを用いることで,照射面に均一でかつ平行な照射光を得た。有効照射径105mm内の照射強度は85mW/cm2,照射面内均一性は±3%以内である。
  2. ホウケイ酸ガラス製上下分割式反応容器(有効照射直径100mm,上部400ml,下部280ml)を作成した(図2)。種々の土壌や標準粘土試料は,いずれも2mmの厚さでほぼ100%の光を吸収・遮断する。そこで,光分解に有効な土壌の厚さを表層2mmと想定し,ステンレスメッシュディスク(線径0.274mm,開孔率40%)を,土壌試料(厚さ10mm)の表面より2mmの深さに設置して,反応土層と支持土層を明確に分離した。ホウケイ酸ガラス製天板の使用と併せて反応容器上端を恒温水槽に数mm水没させ,熱線を遮蔽することで土壌表面温度の上昇を65℃程度に抑制できる(図3)。
  3. モンモリロナイト標準粘土試料(産地:山形県西村山郡大江町大字月布)とカオリナイト標準粘土試料(産地:栃木県河内郡上河内町宮山田関白鉱山)を有機溶媒に懸濁,OCDDを既知量添加,撹拌後,風乾し,光分解実験装置で光照射を行った。その結果,脱塩素化物の生成が認められ,光照射期間とともにダイオキシンの毒性等量は増加した。しかし,二酸化チタン光触媒の添加(土壌:光触媒=20:1)により,OCDDの分解が促進され,毒性等量の増加も抑制される(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 今回作成した光分解反応装置は,農薬等難分解性化学物質の太陽光による分解率や分解過程を予測するために用いることができる。
  2. 今回得られた成果は,土壌に残留しているOCDDの今後の環境動態を考える上で重要な知見となる。光分解により一時的に毒性の高いダイオキシンが生成するが,二酸化チタン等の光触媒を利用した積極的な分解促進除去技術により毒性等量の抑制が期待される。
図表1 225325-1.png
図表2 225325-2.png
図表3 225325-3.png
図表4 225325-4.png
カテゴリ 病害虫 除草剤 水田 農薬

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