タイトル |
モミガラ成形炭粉末を用いた水稲用除草剤の系外流出削減技術 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
高木和広
高梨誠三郎((株)欣膳)
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発行年度 |
2002 |
要約 |
除草剤散布1日後にモミガラ成形炭粉末を水田に50g/m2散布することにより,薬剤の系外流出量を約50%削減できる。また,水田中の農薬動態を予測するモデルPCPF-1の利用により,対象薬剤に最適なモミガラ成形炭の粒子径,炭化温度,施用量が決定でき,系外流出削減技術を効率良く開発できる。
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背景・ねらい |
近年,水田から河川等に流出する農薬(特に除草剤)の生態系への影響が懸念されている。しかし,水田から農薬の流出を制御・管理するための研究・開発はほとんど進展していない。本研究では,まず,担当者らが開発した水田田面水と土壌表層中の農薬濃度の経時変化を予測・解析するPCPF-1モデルを用いて,各種水稲用除草剤の水田からの流出を50%削減するために,土壌表層からの脱着速度と土壌吸着能(係数)の最適化を図る。次に,最適化条件に合うようにモミガラ成形炭(農薬吸着剤)を種々試作し,水田における実証試験を通して,農薬の系外流出削減技術を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- PCPF-1モデルによる計算では,薬剤の脱着速度を1/3程度に低下させ,土壌吸着係数を1.5程度に高めれば,田面水中の薬剤濃度が低下して,水稲用農薬の系外流出量を約50%削減することができる。
- モミガラ成形炭の各種除草剤吸着能は成形炭の比表面積に依存し,650℃炭化物(BET比表面積145m2/g)の方が500℃炭化物(同45m2/g)より,また,同じ炭化温度では粒径の小さい方(0.25~0.5mm)が大きい方(0.5~1.0mm)より高い。水田土壌と吸着能を比較すると,650℃炭化物で80~500倍,500℃炭化物で20~300倍になる。
- モミガラ成形炭(650℃炭化,粒径:0.25~0.5mm) 50g/m2をモデル水田へ添加した場合,除草剤プレチラクロ-ル(PTC)とイマゾスルフロン(IMS)の表面流出量は,表1の最適化脱着速度(kdes’)と土壌吸着係数(Kd’)を用いて計算すると,それぞれ33%,45%削減される (図1)。
- 上記の計算結果を検証するため,ハヤテ粒剤(PTC 1.5%,IMS 0.3%,ジメタメトリン0.2%含有)散布1日後の水田ライシメ-タにモミガラ成形炭を散布(50g/m2)し,系外流出削減試験を行った。その結果,PTC,IMS,ジメタメトリンの表面流出量はそれぞれ46%,46%,64%削減され,3剤合計で49%削減される(図2)。これらの結果から,PCPF-1モデル計算による除草剤の表面流出量削減率は妥当であり,PCPF-1を用いることにより農薬の水田系外流出削減技術を効率よく開発することができる。
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成果の活用面・留意点 |
- モミガラ成形炭を水田に散布(50g/m2)しても除草剤の殺草効果は低下しないことから,本技術は,除草剤流出削減の基盤技術として現場での利用が可能である。
- PCPF-1モデルで数値解析を行うことにより,異なる土壌・気象・水管理条件の水田圃場でも本技術の利用が可能である。
- ケイ素を約20%含有するモミガラ成形炭粉末は,木炭より比重が高く水に沈みやすいため,給水や大量の降雨により水田から流出することがない。また,モミガラ成形炭は水稲収穫,後耕耘により作土と混和されるため,毎年散布する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
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