タイトル |
ストロンチウム同位体比を利用したネギの産地国判別 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2001~2003 |
研究担当者 |
織田久男
川崎 晃
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発行年度 |
2003 |
要約 |
中国山東省産と上海産ネギのストロンチウム同位体比は国内産ネギより高い。中国福建省産のストロンチウム同位体比は国内産と同水準にあるが,ストロンチウム濃度は国内産より高い。これらの特性から,中国産と国内産ネギの産地国判別ができる。
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背景・ねらい |
ネギ等の生鮮野菜の中国からの輸入量が急増し,国内産品の価格よりも安価に流通している。このような情勢下で原産国表示の徹底が求められているが,その表示を確認する手法は未だ確立されていない。野菜の産地の判別には,産地土壌の特性が手がかりになる。地質の年代測定に利用される微量元素の安定同位体比は,地域による差異があり,産地を示す重要な特性を有する。そこで,ストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)に着目し,中国産ネギの3大産地である山東省,上海,福建省産ネギと国内産ネギの判別法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- ネギのストロンチウム同位体比は産地土壌のストロンチウム同位体比をよく反映している。
- 中国産のストロンチウム同位体比は,山東省産(18点)が0.710~0.712の範囲,上海産(13点)が0.710のごく近傍にある。福建省産(6点)のストロンチウム同位体比は0.706~0.709の範囲にあり,山東省産と上海産より低い(図1)。
- 国内産(67点)のストロンチウム同位体比は0.704~0.710の範囲にあり,中国の山東省及び上海産より低い(図1)。
- 中国福建省産のストロンチウム同位体比は国内産と同水準にあるが,福建省産のストロンチウム濃度(平均37 mg kg-1)は国内産のストロンチウム濃度(平均14 mg kg-1)より概して高い(図1)。
- 中国産ネギと国内産ネギのストロンチウム同位体比及び濃度から線形判別関数を求め,産地判別試験用のフローチャートを作成した(図2)。このフローチャートに基づき,店頭買い取り品を用いた判別試験の結果,中国産36点中35点,国内産6点中5点が正しく判別された。
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成果の活用面・留意点 |
- 産地土壌とネギのストロンチウム同位体比が一致することから,他の畑作物に対しても本成果が適用できる。
- ストロンチウム同位体比測定には,同位体比測定用の質量分析計(マルチコレクタ型ICP質量分析計,表面電離型質量分析計など)が必要である。
- 試料前処理から測定までに6日を要する。前処理法をさらに検討することで時間短縮は可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
ねぎ
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