タイトル |
畑条件で栽培するイネはカドミウム汚染水田の修復に最適である |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
阿江教治
杉山 恵
石川 覚
村上政治
|
発行年度 |
2003 |
要約 |
土壌タイプの異なるカドミウム汚染水田においてイネ,ダイズ,トウモロコシを畑条件下で栽培すると,イネが最も多くカドミウムを吸収する。イネは土壌中のカドミウム可溶性画分だけでなく難溶性画分も吸収可能で,汚染水田のファイトレメディエーションに最適である。
|
背景・ねらい |
CODEX委員会で審議中の玄米中カドミウム濃度の新基準は,わが国のそれに比べて数倍厳しく,早急な対策が求められている。基準値を超える恐れがある広範な水田に対する吸収抑制対策としてファイトレメディエーションが有望であり,汚染水田土壌に対する修復作物としては栽培やコストの面からイネが最適であると考えられる。本研究では,イネ,ダイズ及びトウモロコシを異なるタイプの汚染土壌で栽培し,汚染水田土壌の修復に最適な作物種を選定する。
|
成果の内容・特徴 |
- 栽培体系が確立されておりかつ水田転換畑土壌で栽培可能な作物として,イネ,ダイズ,トウモロコシを選定し,ポットおよび現地ほ場でカドミウム吸収試験(畑条件)を行った。品種はこれまでの研究結果を参考にし,イネはカドミウム高吸収品種である密陽23号,IR-8及びPEH-KU-TSAO-TU,ダイズはスズユタカ,トウモロコシはゴールドデントを選択した。
- カドミウムの吸収限界を把握するためポット栽培を2年間行った。各作物地上部のカドミウム吸収量は,全ての土壌においてトウモロコシ≪ダイズ<イネの順位であった(表1)。
- 栽培後,土壌のカドミウムは,イネ区において他の作物区と比較して交換態,無機結合態だけでなく有機物結合態といった難溶性画分及び0.01N,0.1N塩酸抽出画分が著しく減少した。このことから,汚染水田土壌の修復作物としてイネが最適であることが示された(表1)。
- 九州地方の現地ほ場におけるイネのカドミウム吸収試験において,密陽23号およびIR-8がPEH-KU-TSAO-TUより高い吸収量を示した。従って,温暖地におけるファイトレメディエーションには密陽23号およびIR-8が適している。また,0.1N塩酸抽出濃度の減少量から算出した土壌カドミウム減少量(深さ15cm,仮比重1.2で計算)はイネ地上部吸収量とほぼ一致した(誤差10%以内,表2)。
|
成果の活用面・留意点 |
- イネのカドミウム高吸収品種を畑条件で栽培することにより,比較的軽度な汚染水田土壌のカドミウム濃度(0.6~0.7ppm:0.1N塩酸抽出)を3年以内に非汚染レベル(0.3ppm:0.1N塩酸抽出)まで下げることが可能である。
- 寒冷地での栽培においては,その地域の気候特性に適応した品種を選定することが望ましい。
- 収穫したイネに関しては,焼却を基本とした処理を行い,カドミウムを回収する。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
カテゴリ |
コスト
栽培体系
水田
大豆
とうもろこし
品種
|