イヌホタルイのスルホニルウレア系除草剤の抵抗性遺伝子は集団中に急速に広まる

タイトル イヌホタルイのスルホニルウレア系除草剤の抵抗性遺伝子は集団中に急速に広まる
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2000~2002
研究担当者 伊藤一幸(東北農業研究センター)
池田浩明
発行年度 2003
要約 イヌホタルイのスルホニルウレア系除草剤抵抗性は単因子遺伝に支配され,感受性の遺伝子に対して完全優性を示す。このような抵抗性遺伝子は,他殖率および感受性の埋土種子集団の存在にかかわらず,この除草剤が持つ高い淘汰圧によって集団中に急速に広まる。
背景・ねらい 水田で使用される主要な除草剤としてスルホニルウレア系除草剤(SU剤)があり,我が国でこれに抵抗性を示す雑草は,現在までに5科7属の11種に及んでいる。これらの雑草のうち,イヌホタルイは1997年に北海道で初めてSU剤抵抗性型が確認された後,宮城県(1998年),福島県(2001年)でも確認され,全国的な発生が懸念されている。一方,除草剤抵抗性の遺伝子は除草剤による淘汰圧が高いほど集団中に急速に広まるが,他殖性と感受性の埋土種子集団の存在は,除草剤抵抗性の遺伝子頻度の増加を抑制すると考えられている。そこで, SU剤(ベンスルフロンメチル;BSM)に対するイヌホタルイの抵抗性の遺伝様式を解明し,それに基づいて,SU剤抵抗性の遺伝子頻度の増加に及ぼす影響をモデル化する。そして,このモデルによる数値実験結果と発生地における蔓延実態との整合性を評価する。
成果の内容・特徴
  1. イヌホタルイを用いて,SU剤感受性個体(S)の胚珠にSU剤抵抗性個体(R)の花粉を交配させたヘテロ接合体(F1)を得た後に,この自殖種子(F2)を採種し,BSM処理実験に供した。自殖種子の分離比(R:S)は3:1を示し,この植物のSU剤抵抗性は単因子完全優性遺伝することが明らかとなった(表1)。この結果はこれまでの報告(アゼトウガラシ,ミズアオイ)と一致しており,これらの種が属する3科(5属9種)のSU剤抵抗性については,同様の遺伝様式を示すと考えられる。
  2. 次世代のSU剤抵抗性の遺伝子頻度は,SU剤による淘汰圧,他殖性およびSU剤抵抗性と感受性の埋土種子集団を考慮した,完全優性の1遺伝子座2対立遺伝子モデルにより式1のように表せる。
  3. 式1を用いた数値実験により,SU剤抵抗性遺伝子頻度の増加を抑制する他殖率と感受性埋土種子集団の効果はSU剤による淘汰圧の効果に比べて低く,SU剤抵抗性遺伝子は約10世代程度で集団中に広まることが示された(図1)。この結果は,イヌホタルイだけでなく,SU剤の連用を始めてから6~7年目にSU剤抵抗性集団が初めて認められ,その後,年を重ねるほど多数の種で広域的にSU剤抵抗性集団が確認されているという我が国のSU剤抵抗性雑草の出現パターンと良く一致している。
成果の活用面・留意点
  1. SU剤抵抗性雑草のうち,2科(ミソハギ科とミゾハコベ科の2種)の抵抗性の遺伝様式は未検討である。
  2. 式1は,単因子完全優性という遺伝様式を示す他の除草剤抵抗性雑草にも適用できるが,個体数が十分に多い集団を仮定しており,個体数の少ない集団には適用できない。
図表1 225368-1.png
図表2 225368-2.png
図表3 225368-3.png
カテゴリ 病害虫 雑草 除草剤 水田 抵抗性 抵抗性遺伝子 とうがらし

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