迅速測図を用いて過去100年間の土地利用変化を定量的に計測する

タイトル 迅速測図を用いて過去100年間の土地利用変化を定量的に計測する
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 デイビッド スプレイグ
岩崎亘典
発行年度 2003
要約 明治初期に測量された迅速測図と現存植生図を地理情報システム(GIS)で重ね合わせる手法を開発した。茨城県南部の牛久地域の過去100年間の土地利用変化の特徴は、草地、林地の都市的土地利用への変化と草地の消滅に見られる。
背景・ねらい 明治初期(1880年代)に平板測量で作成された迅速測図は,日本で初めて近代的な手法により測量された地図であり,農業環境を復元するための貴重な資料である.しかし,迅速測図は投影法が適用されておらず,現在の地形図などとの重ね合わせが難しい。これまでの迅速測図を用いた土地利用変化の研究は,地図に格子をかけて比較する半定量的な評価を中心に行われてきた。本研究では,土地利用変化の定量的な評価を可能にするために,迅速測図と現在の地形図を高精度で重ね合わせる手法を開発する。その手法を用いて,「茨城縣河内郡牛久駅近傍」を例として環境省の現存植生図(1980年)との重ね合わせ処理を行い,土地利用変化の傾向を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 迅速測図に示されている土地利用境界線をデジタル化した上で,補正を二段階で行う。1次補正:迅速測図と現地形図の間に共通する4つの基準点を選択し,その基準点を利用して現地形図が使用する横メルカトール図法に迅速測図を幾何補正する。2次補正:1次補正した迅速測図を現地形図と重ね合わせ,残るずれをラバー・シーティングで更に補正する。特に,水田など細長い地目は2次補正が必要である(図1)。今回使用した牛久地域の迅速図の1次補正でのRMSエラーは1.7メートルで,地形図をよい精度で重ね合わせが可能であった。また,2次補正での総合RMSエラーはX方向26.2メートル,Y方向26.8メートルであった。これは迅速測図内における歪み及び測量誤差と考えられる。
  2. 1880年代の牛久地域では畑,水田などの農地とともに,林地や草地の農村的土地利用が大部分であった(図2)。迅速測図と植生図を重ね合わせた結果,1880年代から1980年代の土地利用は,無変化(図幅面積の35%),都市、造成地など都市的土地利用への変化(同37%),その他の田畑、林地、草地、緑の多い住宅地など農村的土地利用への変化(同28%)の三つの傾向にまとめられる(図3)。一方、土地利用変化を迅速測図の地目毎に見ると,水田の58%,畑の44%が無変化であるが,林地の48%と草地の62%は都市的土地利用に変化している(図4)。また、それぞれの地目から,他の農村的土地利用への変化も21~38%認められ,農村的土地利用が固定されているものではなく,柔軟に変化している。
  3. 特に、草地が肥料などの供給地として農業景観の重要な構成要素であったことが明治初期まで遡ることにより確認できる。牛久地域の草地は14%を占めていたが,100年の間にほとんど消失している(図3,図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 歴史地図をデジタル化し,高精度の補正を行うことにより,日本全国にわたって整備されているGIS情報との比較が可能であり,さまざまな場面で農業環境の定量化や,農地面積だけでなく,生物の生息空間変動の解析などへの応用が可能である。
  2. ただし,地図によっては精度が違うので注意が必要である。加えて,過去の地形図等はデジタル化されていないものがほとんどであるため,入力作業が必要となる。
図表1 225378-1.png
図表2 225378-2.png
図表3 225378-3.png
図表4 225378-4.png
カテゴリ 肥料 水田

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる