台地畑における浅層地下水中の亜酸化窒素の由来

タイトル 台地畑における浅層地下水中の亜酸化窒素の由来
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2003~2007
研究担当者 坂西研二
松森堅治(農業工学研究所)
神田健一
中島泰弘
藤原英司
発行年度 2004
要約 台地畑を流下する浅層地下水中の亜酸化窒素の由来を窒素および酸素の同位体比に基づいて推定できる。茨城県内の豚舎跡地付近の台地畑では,亜酸化窒素は水平移動した家畜ふん尿由来の窒素と地下浸透した肥料成分の窒素からそれぞれ生成され,両者が混合している。
背景・ねらい 施肥窒素や家畜ふん尿などの窒素は地下水系に溶脱した後,温室効果ガスの一種である亜酸化窒素(N2O)を生成し、大気へ放出する。この過程におけるN2Oの生成およびその起源に関する知見はほとんどない。そこで,家畜ふん尿と化学肥料由来の窒素の流入が考えられる浅層地下水系について,水質を経時的に調査し,地下水系における亜酸化窒素の由来を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 茨城県内の台地畑(厚層黒ボク土,畑地では主に化学肥料を施用し,また近傍の養豚農家では1999年頃まで素堀りによって家畜ふん尿を廃棄していた)を流下する浅層地下水の水質を2001年から3年間にわたってモニタリングしたところ,ある観測井戸において高濃度のN2O(20-5630 μgN mL-1)が検出された(図1,W2)。
  2. この観測井戸では,高水位期には硝酸濃度が高くなり,低水位期にはNH4濃度が高くなる(図2上)。これは,表層畑土壌からの降雨による硝酸イオンの地下浸透と,NH4を含む地下水の水平移動によるものである。
  3. この観測井戸(W2)付近では,δ15Nが低い肥料成分とδ15Nが高い家畜ふん尿という起源の異なる窒素が,表層からの地下浸透と水平移動による拡散によって混合しているため,高水位期はN2Oを除く全窒素 (TN)の窒素安定同位体比(δ15N)が低くなり,逆に低水位期は高くなる傾向がある(図2下)。
  4. 高水位期のN2Oのδ15N値は-20‰程度であり,TNのδ15Nよりもかなり低く,高水位期のN2Oは主に硝酸化成の過程で生成している(図2下)。
  5. N2Oのδ15Nと酸素安定同位体比(δ18O)の変動(図2下)の要因としては,2種類のN2Oの混合,あるいは脱窒等によるN2Oの還元が考えられる。この観測井戸におけるδ15Nとδ18Oの変化量はおよそ1:1であり、一般の脱窒過程における変化量(δ15N:δ18O ≒ 1:2)と異なる(図3)。これは,この観測井戸におけるN2Oのδ15Nとδ18Oの変化が脱窒によるものではなく,地下浸透した肥料成分由来の「軽い (安定同位体比の低い) 」N2Oと水平移動した家畜ふん尿由来の「重い (安定同位体比の高い) 」N2Oとの混合比が変わったことによるものである。
成果の活用面・留意点 この手法は,窒素および酸素の同位体比を用いることによって,地下水中の亜酸化窒素の由来および生物化学的変化を把握する手法として活用できる。
図表1 225400-1.png
図表2 225400-2.png
図表3 225400-3.png
カテゴリ 肥料 施肥 モニタリング

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