タイトル |
畑ほ場における窒素動態・収支シミュレーションシステム |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
竹内 誠
板橋 直
林 健太郎
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発行年度 |
2004 |
要約 |
窒素ターンオーバーモデルを基本に,気象,土壌,肥培管理等の指定により,畑ほ場の窒素動態・収支を算出するシステムを開発した。気温,降水量,投入肥料・堆厩肥の施用回数,種類,量,鍬込深等を細かく設定できるので,各種流出低減技術の評価,地力変動予測等に有効である。
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背景・ねらい |
農地系からの窒素流出を抑えるための各種流出低減技術が開発されてきている。しかしながら,その導入効果は大きく変動し,場合により効果の現れない事例も多い。この原因は,試験ほ場の立地条件(気象,土壌),肥培管理法の違いで窒素の無機化・有機化・脱窒等の反応が著しく異なるためである。そこで,これら変動要因を取り入れ,簡便かつ定量的にほ場レベルでの窒素の動態・収支を把握しうるシステムの構築を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 本システムは,地力窒素の長期変動予測に対応するため,英国ローザムステッド農業試験場で開発された窒素ターンオーバーモデルを基本としている。当該モデルでは,土壌中に投入された有機物・作物残さの分解時に放出される無機態窒素の一部が,土壌微生物,並びにより分解半減期の長い土壌腐植に取込まれて有機化され,同時に土壌からも窒素の無機化が生じると想定されている。また,一定の炭素/窒素比よりも大きな有機物は,土壌溶液中の無機態窒素濃度が上昇するまで分解しないと想定されている。
本システム(図1)では,気温,降水量,さらには投入肥料・堆厩肥の施用回数,種類,量,投入深等を簡易操作で細かく指定することが出来る。また,我が国の畑土壌の大半を占める黒ボク土では,有機物の分解が遅延することが知られているので,分解速度係数の補正はリン酸吸収係数で行うように最適化されている。 - 本システムの実行により,週毎の対象作物の窒素吸収経過(目標及び計算値),脱窒揮散量,バイパス流依存のN流出量,土層1.5m以下への窒素流出量,反応に関与した土壌窒素量,堆厩肥投入未分解窒素量,及び1.5m深までのアンモニア態窒素土壌保持量,及び層位別硝酸態窒素存在量,1.5m深までの炭素放出量が算出・図示される(図2)。
- 本システムによってマルチ栽培の効果,流出に及ぼす灌漑の効果,緩行性肥料の効果,クリーニングクロップ導入の効果等を迅速に把握できる。また,地力窒素の長期変動予測が可能になる。
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成果の活用面・留意点 |
- 耕種基準・施肥基準,あるいは新たな肥培管理技術等を導入する際に,当該の基準や技術が適用地域の立地条件・肥培管理条件下で対象作物の生育にどのように影響するかを推定することができる。また,当該の基準や技術が環境保全上問題ないか等を,窒素動態の面から定量的に判断するために利用できる。
- 本プログラムは,Windowsに対応するプログラミング言語Cで作成された(実行ファイルのサイズは480kbyteと小さい)。窒素の動態を表現する関数群は独立しており,プログラム自体の修正は可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
肥料
くり
施肥
肥培管理
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