タイトル |
導入天敵昆虫等の新たな生態系影響評価方法と導入判断基準 |
担当機関 |
[分類] |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
望月淳
屋良佳緒利
伊藤健二
望月雅俊(果樹研)
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発行年度 |
2005 |
要約 |
導入天敵昆虫等の生態系影響をその可能性と程度とに分割し,定着等の評価項目について,それぞれ5段階の基準に基づいて評価する新たな定量的評価方法を開発し,導入判断基準となる指標値を提示する。
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背景・ねらい |
近年,外来生物の生態系に与える影響が問題となっている。導入天敵昆虫等(ダニ類を含む)は,非意図的に侵入してきた外来昆虫等の農業被害を防止するため,意図的に導入されるものである。平成11年に環境省は「天敵農薬に係る環境影響評価ガイドライン」を報告し,導入天敵昆虫等の生態系影響評価方法を示している。しかしながら,この方法は,定性的であり,海外の天敵昆虫等を導入する際に必要な事前評価のための判断基準や導入判断基準について,必ずしも明確ではない。そこで,ヨーロッパで提唱されている評価指標を使用する導入天敵昆虫等の定量的評価方法を参考に,我が国の環境にも適用可能な新たな基準を作成し,客観的で透明性の高い導入判断基準を提示することをねらいとする。
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成果の内容・特徴 |
- 導入天敵昆虫等が生態系に与える影響を,その可能性と程度とに分割し,定着等の6つの評価項目について,それぞれ我が国に適合した5段階の基準を設ける。
- 導入天敵昆虫等の事前評価に係る時間やコストを最小限にするため,評価のプロセスを2ステップで行う。
- 評価の第1ステップでは,種ごとに定着,分散性,寄主範囲の各評価項目について,1次基準に基づき,それぞれの影響の可能性(L)と程度(M)を5段階評価する(表1)。
- 各項目におけるL×Mの値の総和が,対象とする天敵種の生態系影響1次指標である。
- 評価の第2ステップは,我が国の生態系影響評価で必要な「稀少種や地域固有種への直接影響,近縁天敵との競争,近似種との交雑」の3項目からなる2次基準を新たに設け,これらに対する L×Mの和を求め,1次指標と合わせて,総合指標とする(表2)。
- 我が国及び海外の導入天敵に関する生態系影響の事例(60種)を参考に指標を計算すると,生態系影響が報告されていない種は1次指標が40より少なくなったので,この数値を第1ステップでの導入基準とした。したがって,1次指標が40を超えない種は,第2ステップの評価を行うことなく,我が国への導入が可能である。
- 1次指標が40を超える種については,第2ステップの評価を行うべきである。
- 生態系影響が問題として海外でも指摘されている種は,総合指標が80を超えるので,導入を見送るか,野外に逃亡しない方策を採るべきである。
- 我が国に導入された外来天敵昆虫等の生態系影響指標の計算例を示す(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 対象種の既往のデータを利用して,比較的容易に生態系影響指標が算出でき,「導入判断基準」に基づいて天敵導入の可否を判定できるので,「天敵農薬に係る環境影響評価ガイドライン」に先立って,本法による事前評価を行うべきである。
- 海外から導入する天敵昆虫等は,たとえ我が国に同一種が生息する場合でも,遺伝的に異なる可能性があるので,導入に当たっては,この指標を適用すべきである。
- 天敵の海外からの導入に際しては,植物防疫法等の法令により規制される種がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
病害虫
コスト
農薬
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