菌床シイタケの新害虫をヤガ科ナミグルマアツバと同定

タイトル 菌床シイタケの新害虫をヤガ科ナミグルマアツバと同定
研究期間
研究担当者 仲田幸樹(愛媛県林業技術センター)
農業環境インベントリーセンター 吉松慎一
発行年度 2006
要約 菌床シイタケの菌糸を食害するチョウ目ヤガ科幼虫の飼育羽化成虫の形態を詳しく検討し、これまで害虫としては記録のないナミグルマアツバと同定しました。また、近縁なヒメナミグルマアツバとの雌成虫での識別法を開発しました。
背景・ねらい 2000年愛媛県のシイタケ栽培地で、シイタケ菌床表面の菌糸を食害する見慣れないヤガ科幼虫が発見されました。本種が加害した箇所からはシイタケ子実体が発生しません。ヤガ科幼虫は未知のものが多く、幼虫では同定できなかったので、飼育して成虫標本を得ました。外部形態からは、これまで害虫としては記録のないAnatatha属の1種であることまでしか同定できませんでしたので、関連のタイプ標本の特徴をさらに詳細に観察・調査し、種名を正確に同定することを目的としました。
成果の内容・特徴 得られた本種成虫の雌交尾器をロンドン自然史博物館所蔵のナミグルマアツバのタイプ標本のものと比較したところ、本種は日本・韓国・ロシア極東地区に分布するナミグルマアツバAnatatha lignea(図1 左)と同定できました。日本国内に生息し、成虫斑紋が本種と酷似するヒメナミグルマアツバAnatatha misae(図1 右)とは、雌交尾器のシグヌム(交尾嚢にある硬化片)の形状が異なり(図2)、明瞭に識別できることが分かりました。また本種の幼虫形態は中村(1989)によって既に報告されていますが(図4 右)、今回得られたものとは明らかに異なる別種と思われたため、改めてナミグルマアツバの幼虫形態として報告しました(図3、図4 左)。
本種によるシイタケへの被害は、現在までに愛媛県からのみ確認されていますが、他の都道府県でも今後の発生に注意する必要があります。ただし、ほだ木シイタケへの加害は見つかっていません。食菌性はチョウ目ではまれであり、以前に報告したムラサキアツバ(Diomea cremata : 農業環境研究成果情報第19集)とともに、今回のAnatatha属での食菌性の種の発見は、学術的にも特筆すべきものです。
図表1 225478-1.jpg
カテゴリ 害虫 しいたけ

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