タイトル | 土壌中で生育している微生物の遺伝子の発現を検出した |
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研究期間 | |
研究担当者 |
生物生態機能研究領域 王勇 森本晶 藤井毅 小川直人(現静岡大) 福田雅夫(長岡技術大) |
発行年度 | 2007 |
要約 | 土壌から高純度のRNAを抽出する手法を開発し、この手法を用いてPCB分解に関わる微生物のPCB分解遺伝子の発現が誘導物質を添加した土壌で誘導されることを確認しました。この様に土壌中で生育している微生物の遺伝子発現を直接検出することにより、自然環境下で土壌微生物の機能を解析することが可能となりました。 |
背景・ねらい | 微生物は、様々な物質の分解者として自然界の物質循環を担い、肥料の溶脱や有害物質の浄化、大地からの温室効果ガスの放出など、様々な現象に重要な働きをしています。しかし、自然環境下で生息する微生物は培養が難しく、これまで土に生息する微生物の機能を直接解析することはできませんでした。そこで、我々は土壌から直接微生物のRNAを抽出し、土の中での微生物の有用遺伝子の発現の検出を試みました。 |
成果の内容・特徴 | 土壌からRNAを抽出しようとする場合、余すことなく様々な微生物から効率よくRNAを抽出できることが重要となります。我々は、土壌粒子と混在している微生物を効率よく破壊するために、硬質ビーズを土壌懸濁液に投入し、大型の強力な破砕機で高速微細振動をかけて破砕することとしました。得られた土壌懸濁液には、腐植酸などの様々な物質が含まれており、通常の方法でこの土壌懸濁液からRNAを抽出すると、多量の不純物が混入し、その後の解析が困難となってしまいます。我々は、様々な核酸精製法を組み合わせ、土壌から抽出したRNAに含まれる不純物を限りなく少なくすることに成功しました(図1)。開発した抽出法を用いて、ポリ塩化ビフェニル(PCB)分解菌として知られているRhodococcus sp. RHA1株を滅菌土壌に接種し生育させたモデル土壌からRNAを抽出し、PCBの分解に必要となる遺伝子の発現を、定量PCR法で検出しました。その結果、この遺伝子の発現を誘導するPCB類縁物質、ビフェニルを土壌に添加した場合に、PCB分解遺伝子の発現が誘導されることを確認することができました(図2)。 この様に、土壌から抽出したRNAを用いて、実際に土壌中で生育している細菌の遺伝子の発現を直接検出した例は極めて少なく、この研究成果は、今後、肥料の溶脱や有害物質の浄化、大地からの温室効果ガスの放出などに関与する土壌微生物の遺伝子発現を自然環境下で解析するための大きな突破口を開くものです。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 肥料 |