イネ品種間差を利用して、玄米のカドミウム汚染を低減

タイトル イネ品種間差を利用して、玄米のカドミウム汚染を低減
研究期間
研究担当者 荒尾知人
山口誠之((独)農業
食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター)
土壌環境研究領域 石川覚
発行年度 2008
要約 玄米のカドミウム濃度には2~10倍程度の品種間差があることを明らかにしました。さらに玄米カドミウム濃度の低い品種を育種素材として、一般普及品種に比べ玄米カドミウム濃度が約半分の新たな系統を開発しました。
背景・ねらい
食品を通じて一定の量を超えるカドミウム(Cd)を長年にわたり摂取し続けると、人体に有害な影響を引き起こす可能性があります。そのため、コメの国際的なCd基準値が制定されました(精米あたり0.4mg kg-1)。稲のCd吸収を抑制するために、これまで客土や湛水管理等の対策が実施されてきましたが、コストや有効性の面から適用範囲が限定されるため、新たな汚染低減技術が求められています。そこで、玄米Cd濃度の品種差を明らかにし、その知見に基づいて低Cd吸収系統の開発を検討しました。

成果の内容・特徴 Cdで汚染された土壌で多数の稲品種を栽培し、玄米Cd濃度の品種間差異を調べました。その結果、玄米Cd濃度は品種間で2~10倍以上の差がありました(図1)。特に、熱帯ジャポニカ品種である「LAC23」の玄米Cd濃度は、日本の主要品種である「コシヒカリ」等の約半分でした。
LAC23は出穂が遅く、長稈、長粒、低収量であるため、日本での実用的な栽培には向いていません。そこで、草姿が良好な安定多収品種「ふくひびき」と交配し、Cd濃度が低いままで栽培特性が向上した系統の開発を行いました。自殖3世代(F3~F5)にわたる解析の結果、「ふくひびき」や「ひとめぼれ」に比べて、玄米Cd濃度が40~50%程度低く、かつLAC23に比べて出穂が早く、草丈が比較的低くなった5系統を選抜できました(図2、写真1)。これら5系統に、育成地(東北農研)の系統番号「羽系1118」~「羽系1122」を付与しました。
図表1 225526-1.jpg
図表2 225526-2.jpg
図表3 225526-3.jpg
カテゴリ 育種 コスト 品種 水管理

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