タイトル | 水田からのメタン放出に対する大気二酸化炭素濃度と夜温上昇との相互作用 |
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研究期間 | |
研究担当者 |
(独)農業 吉本真由美 桑形恒男 食品産業技術総合研究機構作物研究所 近藤始彦 石丸 努 石郷岡康史 大気環境研究領域 長谷川利拡 |
発行年度 | 2008 |
要約 | 大気二酸化炭素(CO2)濃度の上昇は、水田土壌からのメタン(CH4)放出を促進しますが、その程度は高夜温によって抑制されることをチャンバー実験により明らかにしました。この結果は、気候変化のメタン発生へのフィードバック効果の解明と温暖化の予測に役立ちます。 |
背景・ねらい | 水田は温室効果ガスであるメタンの主要な発生源の1つです。温度の上昇が水田からのメタン放出を増加させることは古くから知られていますが、大気CO2の増加もメタン放出を促進することが明らかになってきました。しかし、CO2濃度と温度の組み合わせがメタン放出に及ぼす影響についての知見は限られています。特に、夜温上昇の影響は不明で、将来のメタン放出量の推定を不確実にする要因になっています。そこで、半閉鎖型自然光環境制御チャンバー(クライマトロン)においてCO2濃度と夜温を上昇させ、水田からのメタン放出に及ぼす影響を調査しました。 |
成果の内容・特徴 | ポットに移植したイネ(品種、IR72)を屋外で栽培し、生殖成長中期(移植59日後)からクライマトロンにおいて、2水準の夜温(高夜温32℃、低夜温22℃、昼32℃)と2水準のCO2濃度(標準濃度 380ppm、高濃度680ppm)の4条件下で栽培しました(図1)。メタンフラックスは、移植5週後から出穂期頃まで急激に増加し、以降成熟にかけて減少するという明瞭な季節変化を示しました(図2)。高夜温の影響は大きく、メタン放出量を平均で約50%増加させました。また、高CO2濃度も、これまでと同様にメタン発生を促進しましたが、本実験では、茎数に差がない条件でも高CO2濃度の影響が顕著に現れることを初めて示しました。ただし、高CO2によるメタン放出の増加率は、低夜温区で32%と高かったのに対し、高夜温区では4%と小さく、CO2濃度上昇による水田からのメタン放出の促進が、高夜温によって抑制されることがわかりました(表1)。イネのバイオマス増加はメタン放出を促進する要因のひとつですが、高CO2によるイネの乾物生産の増加も高夜温によって抑制されたことから、高夜温はイネの光合成・乾物生産のCO2応答を低下させることによって、メタン放出に対するCO2影響を軽減させる可能性が示唆されました。以上の結果は、気候変化のメタン発生へのフィードバック効果を解明・予測する上で有用な知見です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 環境制御 水田 品種 |