牛由来腸管出血性大腸菌O157:H7(H-)の分子遺伝学的性状

タイトル 牛由来腸管出血性大腸菌O157:H7(H-)の分子遺伝学的性状
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1996~1996
研究担当者
発行年度 1997
要約   牛由来腸管出血性大腸菌O157:H7(H-)と患者由来菌の異同を解明するために,分子遺伝学的性状を調べ比較検討したところ,牛由来菌の遺伝子型はきわめて多様であるが,一部の牛株は患者株と同一の遺伝子型であることを明らかにした。
要約(英語) We examined by comparison genotypes for elucidating the differences of Enterohaemorrhagic Escherichia coli O157 strains isolated from cattle and from patients. Results of DNA pattern analysis by pulsed-field gel electrophoresis indicated that extremely variable DNA patterns were recognized among strains isolated from cattle. No epidemiological relationships were found, small numbers in their strains were clarified genotypically as the same with the strians isolated from patients. (Lab. of Zoonoses, Feed Safety Research Division, TEL +81-298-38-7815)
背景・ねらい
  全国各地で牛や飼育環境から分離された腸管出血性大腸菌O157:H7(H-)について分子遺伝学的性状を検討し,牛由来菌と患者由来菌との異同を遺伝子レベルで比較することにより,本菌感染症の疫学解析のための情報を提供することを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. 牛由来大腸菌O157:H7(H-)102株及び国立感染症研究所分与の患者由来11株を供試した。牛由来102株の毒素型(stx)は5株(4.9%)がstx1,59株(57.8%)がstx2,35株(34.3%)がstx1とstx2であり,他の3株(3.0%)はstx遺伝子陰性であった。患者株では,6株(54.5%)がstx2,5株(45.5%)がstx1とstx2であった。また,本菌の腸管粘膜への付着に関連する遺伝子eaeAは全菌株から検出された。
  2. Random amplified polymorphic DNA(RAPD)法による遺伝子型別では供試102株はⅠ~Ⅳの増幅パターンに型別された。その内訳はⅠ型11株(10.8%),Ⅱ型20株(19.6%),Ⅲ型63株(61.8%)及びⅣ型8株(7.8%)であった。また,図1に示すようにRAPD型とstx型に関連が認められ,RAPDのⅠ及びⅡ型はstx1とstx2,Ⅲ型は大部分がstx2,Ⅳ型はstx1もしくはstx遺伝子陰性株であった。しかし,RAPD法は本菌型を大きく群別するうえでは有用であるが,菌株間の識別には適さないものと考えられた。
  3. パルスフィールド電気泳動(PFGE)法による遺伝子型別では供試102株は制限酵素Xba I消化において,切断パターンが66に区分された。牛株のなかに患者株とXba I-PFGE像が類似するものが少数認められた(図2)。そこで,さらに制限酵素Bln I-PFGEで解析したところ,5株(4.9%)は患者株と同じDNAパターンを示し,これらは同一の遺伝子型であると考えられた。
  4. PFGE法において肉眼的に識別可能な牛由来66株と患者由来11株,計77株のXba I-PFGE像を用いてクラスター解析を行った。77株は相似係数0.6のレベルで10のクラスター(図1)に大きく分けられたが,一部を除いてクラスター内で地域的な偏りは認められなかった。このことから,国内各地に異なるクローンの本菌が広く分布していることが窺われた。
成果の活用面・留意点
      PFGE解析により,大腸菌O157:H7(H-)菌株間の識別が可能となったが,遺伝子型の分析だけでは汚染源の特定は困難である。患者と食材,食材と汚染源とを関連づける汚染ルートを解明するための詳細な疫学調査が必要である。
図表1 225647-1.JPG
図表2 225647-2.JPG
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