タイトル | 発育不良子豚およびと畜場出荷豚由来Mycoplasma hyorhinisのマクロライド系薬剤感受性と耐性機構の解明 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 | 2003~2004 |
研究担当者 |
江口正志 小林秀樹 秦 英司 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 発育不良子豚およびと畜場出荷豚から分離されたM. hyorhinis株のマクロライド系薬剤耐性株の割合はそれぞれ約40 %および4 %であった。全ての野外耐性株は23S rRNAのA2059G変異が確認され、この変異が耐性発現に関与していることを明らかにした。 |
キーワード | ブタ、Mycoplasma hyorhinis、マクロライド、耐性菌 |
背景・ねらい | マイコプラズマ感染症対策にはマクロライド系薬剤(ML)が第1選択剤として使用されている。1991~1994年に国内の発育不良豚から分離されたMycoplasma hyorhinisの約10%はMLの耐性株であったと報告されている。その後、国内における上記豚由来マイコプラズマの薬剤感受性試験報告はない。そこで、飼料添加物あるいは治療薬として使用されるマクロライド系薬剤に暴露される機会の多い発育不良子豚(2002~2004年採材)および休薬後に出荷される豚(2004年採材)から分離されるM. hyorhinisの薬剤感受性を調査し、感受性の変化を解析する。さらに、マクロライド系薬剤耐性株について、耐性機構を解明する。 |
成果の内容・特徴 | 1. MLおよびリンコマイシン(LCM)に同時に耐性を示したM. hyorhinis株数は子豚由来71株中28株(39.4 %)、出荷豚由来80株中3株(3.8 %)であった(表1)。どちらか一方のみに耐性を示す株はなかった。なお、耐性株検出頻度に地域差はなかった。 2. タイロシン(TS)で選択したTS耐性BTS7T株(MICTS100μg/ml)はLCMに対しても高度耐性(MICLCM >100μg /ml)を示したが、LCMで選択したLCM耐性株(MICLCM 50μg /ml)はTSに対しては中等度耐性(MICTS 6.25μg /ml)であった。 一方、LCMで選択したLCM耐性株を更にTSで選択しMICTS 100μg /mlとするためには、TSのみで選択してTS高度耐性株を作出するのと比較し3倍の継代数を要した(図1)。 3. TSで選択したTS高度耐性株の変異部位は23S rRNAのドメイン V(dV)の部分に1カ所、A2059Gが認められた。ML耐性野外株においても全て同じ変異が確認された。LCMで誘導したLCM耐性株の変異部位は、dVの他にdIIにも認められ(計4カ所)、LCM耐性株をTSでさらに選択したTS高度耐性BTS7株にはLCM耐性株の変異点に加え、A2062Gが認められた(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 今回得られた成績はわが国において発育不良子豚から分離されるM. hyorhinisが高い割合でML耐性を示すことを示唆している。子豚のM. hyorhinis感染症対策にMLを用いる場合にはMLに対する感受性を確認する必要がある。 2. マクロライド耐性M. hyorhinis野外株のポイントミュテーション(PM)の位置が確認されたことから、変異位置を含むM. hyorhinis菌種特異PCRとPM検出装置を使うことにより肺炎病巣部中の耐性株の診断が迅速に行える可能性がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 出荷調整 耐性菌 肉牛 豚 薬剤 薬剤耐性 |